本棚
月曜のその日、さつきが八畳の本棚を見てうーんと唸っているのを見て、英二は話しかけた。
「どうしたの」
さつきは振り向いて、
「もうすぐ本棚がいっぱいになっちゃいます」
とこたえた。英二は本棚まで歩み寄って、棚を見上げた。
さつきと自分の本が、ずらりと並んでいる。二人とも本をよく読むから、本棚は埋まっていく一方である。
「どうしましょう」
英二は考えた。しばらくして、
「……電子書籍っていうのはどう?」
「電子書籍?」
彼はうなづいた。
「タブレットを買って、本を買って、ダウンロードする」
さつきはむー、と唸った。
「欲しい本がインターネットの本屋さんにない場合はどうしましょう」
「そしたら例外で紙の本を買ったら」
さつきはまだ考えている。が、いい案は結局浮かばなかったらしい、しばらくしてタブレットにします、と言いに来た。そこで二人で出かけて行って、電化製品を扱う店でタブレットを求めた。
「サブスクでドラマも観られるよ」
「本の方がいいです」
二人は早速本をインターネットで買い、ダウンロードしてみた。完了の二文字が出た時、さつきは小さく歓声を上げた。
「もっと早くこうすればよかったですね」
さつきが喜んでいるので英二も目を細めた。さつきは八畳に行って、今まで読んできた本の背表紙を見上げた。どの本も装丁が気に入っていて、それでいて内容が面白いものばかりである。タブレットで買う本のなかにこの本棚の本も増えていくだろうが、これらの本を処分することはないだろう。
家事も、二人は分担でやっている。
さつきは店で水仕事をすることが多いので、部屋では英二が水回りを掃除する。洗面台と風呂掃除と台所の流しが主なものだが、さつきが入浴したあと英二も風呂に入って、出て行き際風呂の栓を抜く。そして浴槽に洗剤を撒いて脱衣所に行って身体を拭き、着替えてから浴槽に水をかける。これで風呂掃除は完了である。市販の洗剤は優秀だね、英二は言った。
食事は、店に出る日はもっぱらさつきが作っている。その分定休日の月曜日は、英二が夕飯を作る。一人暮らしが長かったので二人ともそれで困るということはない。洗い物も、月曜日は英二がする。
ふだん一晩中仕事をしているので、二人は月曜日はよほどの用事がないと表に出ない。 週休が一日なのだから、自分のことをしたいだけすると時間はそれだけで過ぎていく。
それでもなにかの用事がある時は、大抵二人で出かけて行って外食もせずに帰ってくる。 家が居心地がいいのだから、早く帰宅して当然なのかもしれない。
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