凡庸なる脳漿
次郎次郎河太郎
無知 1-1
『宇宙は無限大だ。だけど宇宙の中にあるものは有限だ。この世の中にあるものは何もかも限りがある。ただひとつを除いて。愛だ。僕の君への愛は無限大なんだ』
ベッドの上であぐらをかき、ページをめくる。毎日同じことを繰り返し、毎晩同じ本を読んでいるが、未だにこの本は興味深い。「恋愛」なんて何の意味も無いように思えるが、なぜか心が惹かれてしまうのだ。
「おい、もう寝ようぜ」
その声と共に、見慣れた男の顔が二段ベッドの上の段から出てきた。俺の同僚だ。
「わかった」
ところどころ文字が黒くつぶされている、ボロボロの本を閉じた。
明日もまた仕事だ。
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