梅子(七十六才)、トラックにはねられても転生転移しなかったかわりに不老不死になったから、田舎の実家をDIYリフォームしながら永遠のスローライフします。

珠邑ミト

一章 はじまりはカモネギから

第1話 あらあらまあまあ、今からですか?



 *~*~*



 ほんとうに、ちょっとした不注意だったんですよ?


 狩って来たばかりのかもがまだ生きてて、ネギくわえて逃げようとしたもんだから、わたしったら慌ててつかまえようと、道路に飛び出しちゃったんです。


 そしたらね、シロイヌジルシの宅配便さんのトラックとぶつかっちゃって。いや、だからあれはね、トラックの運転手さんは、ぜんぜん悪くないの。わたしがわるいの。飛び出しちゃったんだから。


 そうしてね、どーんて。飛ばされちゃった。


 はっと気が付いたらね、とってもきれいな明るいところにいて、ああ、これがお迎えかしら。十年くらいまえに、先に行ったおじいさんが、「待ちくたびれたぞお前」って怒ってくれるのかしらって思ったら。


 あらあら、なんということでしょう。


 これ極楽ね?

 きんきらぴかぴかの、蓮の上にいるのね。そしてすぐそばには、仏様が困った顔で、わたしのこと、ごらんになってらっしゃるの。そう、あたまは螺髪ぱんちぱーまで、ぐーるぐるの、眉間みけん白毫びゃくごうで、くるんくるんのね。そうしてね、


「――あなた、こまります」


 そんなふうに、ため息つかれちゃった。


「本当は、あの鴨とネギをしょって、天竺に旅立ってもらうための猿山さるやまサトルくんを、こちらに召喚する予定が、あなたが捕まえて、しかもトラックにぶつかってしまうんですもの。予定が狂ってしまいました」


 いやいや、そう仰られましても、仏様ったら。

 では、わたしはまだお迎えをされるのではなかったと?


「はい。あなたまだまだ元気でいてもらう予定でしたよ。でも、まあこちらの不注意といいますか、手違いで死なせてしまったのは申し訳がないし、死なせてしまったのは事実なので」


 はあ。


「なので、今から転移のギフトをお渡しします」


 はい?

 それって、もしかして、最近わたしが、あの、孫たちに用意してもらって、さぶすく、とかいうんでしたっけ? あれで、お気に入りでよく見ている、「いせかいアニメ」でよく見る、あれですか?


「そうです。申し訳がないので、ギフトだけはお渡しして、元の世界にお返ししますので」


 あの、それって、そのギフトってどういう……。


「不老不死のギフトです」



 ――いや、ちょっと待って下さい、仏様。



 わたし、山田やまだ梅子うめこ、七十六才。

 今から不老不死になるんですか?


 ……ほんとに?




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