🏠ティースプーン2杯分の恋がしたいヨッシー(🏠あの不動産屋は何処に消えた!番外編)
オカン🐷
第1話 幸子
「だったら家に連れて来なければいいだろう」
「あまりに気の毒だったから少しの間だけと思って」
「あんなルナちゃんに似た子、僕が惹かれると思わなかった?」
「似てないわよ。ルナちゃんはもっと可愛くて、良雄が一緒になってくれていたら家をリフォームして一緒に暮らすっていう母さんの夢があったのに」
「もう、それは言わない約束だろ」
階段を下りて来る足音がした。
「すみません。すっかり甘えてしまって。出て行きます」
「出て行くって、行く所あるの?」
「……」
「ないんだろ。甘えついでにもう少しいたら」
「でも」
幸子はミオを上目遣いでチラリと見た。
「気にしなくていいから。ごめんな、親子喧嘩に巻き込んでしまって」
良雄は幸子を2階へと押しやった。
「フフフッ」
「何?」
「ヨッシーらしいなと思って」
「でも、ミオさん少しノイローゼ気味で」
「ママとミオさんでそんな話してるんだ。良かった。ルナのせいで疎遠になってないか心配してた」
「そこは二人とも大人やから」
シッターがハヤトを抱いて来た。
昼寝から目覚めて泣いたようだった。
頬の涙の痕を拭ってやりながら言った。
「ハヤト、ばあばだよ。お話する?」
「バー、バー」
「あら、もうしゃべれるんやね」
「これをしゃべれると言うママは、相当なばあばバカ」
「ルナ、もう切るね」
「うん、また」
幸子はミオの勤める病院の産婦人科で出産した。
退院するときまで家族はおろか誰も見舞いに来なかった。
支払いもしないまま入院病棟を退室し、待合室に小さなカバンと新生児を抱いて座り込んでいた。
まだあどけなさの残る幸子は子どもが赤ん坊を抱いているようだった。
勤務を終えたミオが通りかかると、まだ座ったままで、受け付けの事務員が言うのには保険証の連絡先から迎えが来るのを待っているということだった。
待合室は出入り口の風が吹き込んできて、長時間過ごすには母子ともに厳しい感じがし、ミオが家に連れ帰って来た。
家族と連絡が取れたらミオの家に迎えに来るよう事務員に伝えた。
「ルナちゃん」
暗がりで牛乳を飲む女性がルナに見えた。
良雄が電気をつけると、使ったコップを水にも浸けないで2階への階段を慌てて上がって行った。
誰だろう? 訝しく思いながら、手を洗い、ミオの作ってくれた夜食を温めた。
しばらくすると2階から赤ん坊の泣き声がした。
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