Singularityー未解決事件詳細保管解決課-
乾杯野郎
第1話
「動くな!」
古びたビルの一角で3人の刑事のうち2人が小柄で作業着の男に拳銃を向けて警告をした。
刑事の1人が
「和田さん!拳銃なんて!相手は1人ですよ!高谷さんも!」
「うるさい!お前も早く拳銃をぬけ!」
「あれ?なんでバレたんだ?こりゃミカさんに報告…いちいちする必要はないか…はいはい降参…」
作業着の男が3人の刑事に降参する振りをしながら1人の刑事に手を払う動作をする
「ギャッ!」
強い風が通った気配がしたと同時に血しぶきが飛び悲鳴の後構えた手と一緒に拳銃が地面に落ち首が胴体と離れ落ちた。
「…すると思ったァ〜?」
「?!なんだ?!何をした!お前!」
「狼狽えるな!」
パァン!
もう1人が発砲したが作業着の男には当たらない
「ざんねーん、俺には当たらないよ〜」
そう言い今度は左手で手を払う動作をすると今度は撃った刑事の首が胴体と離れ血しぶきが飛び散った。
「…なんなんだ!何をした!何か持ってるのか?!お前!」
五体満足な男は恐怖で腰を抜かしその場に尻もちをついた。
そうしてる間に作業着の男が迫ってくる。
ーもうダメだ、俺は…ここで…ー
刑事が諦めた時
「アッハッハッハッハッ殺されると思った?」
作業着の男が近づき腰を降ろして急に笑いだし話を続けた
「あのさぁ?どうせ俺へ射殺命令は出てんだろ?なんで君は銃を抜かなかったの?」
「発砲許可は発令されてない!それに俺達警察官は生きて容疑者を…逮捕し真実を追求しなければ…それに…」
「それに?」
「犯罪者だとしても裁判を受ける権利がある、罪を犯したならば司法の場で…」
「君…真面目だねぇ〜俺の事この2人から聞いてないの?」
「何も…」
「は?君公安じゃないの?」
「俺は機捜の…」
「あー所属とか別に興味無いわ、機捜…?って言ってもこいつらと同じ警察なんだよね?君も」
「…そ、そうだ!警察官だ…お、お前を逮捕…」
震える手で手錠に手をかける刑事
それを嘲笑しながら作業着の男はまた笑いながら話を続けた
「アハハ!ビビってる君が俺を逮捕?冗談?それ?」
そう言うな否や作業着の男が手錠に手をかけた刑事の手に向けて何かを放った
パキッ!
部屋の床に亀裂が入る
「…?!なんだよ…こ…こ…これ…」
「コレ見ても…俺を逮捕する?」
ーここで死んでも信念まで失えない!ー
そう腹を決め刑事は声を上げた
「俺は…お前を!…逮捕する!!」
「アンタ…名前は?」
「…機捜の加藤 国広…!」
「……俺なんかを人扱いしてくれたんだ…加藤君は優しいな。気分がいいから助けてやるよ、その代わり…加藤君、俺の事をキチンと伝えろ、じゃあな!」
そう言いい体を起こし早歩きで去っていった…
「…なんなんだ…」
作業着の男が立ち去ると急に現実に引き戻され加藤が周りを見渡すと血塗れの死体が2つ…
震える右手を左手で抑えながらスマホを取り出し加藤は本部に連絡をした
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
加藤はありのままを報告したが何故か服務規定違反と見なされ査問委員会にかけられ機捜から外された
加藤は私物を整理していると「元」同僚から
「犯人を目の前にし怖気付いた」
等聞こえるように嫌味を言われた
機捜本部の部屋を出る時に
「お世話になりました」
と一礼したが誰も反応無し
ーさてと…今度の部署は…地下5階?!未確認事件詳細保管解決課?!…地下5階なんてあるのか…それに噂は本当だったんだ…ー
「未解決事件詳細保管解決係」は公安の一部との噂もあるが他にも
「警察の荷物置き場」
「警察のゴミ置き場」
「穀潰しの役立たず」
と酷い噂が絶えない
自分はありのままを話した、辞める道理はない、それに同じ警察官の仇を取るためにどんなに冷遇されようと自分は辞めないと決めたのだ、そのためにはなんだってやる…と
「どこの世界に辞令にエレベーターの乗り方が書いてあんだよ…何何?開くと閉まるのボタンを同時に押した後に階数ボタンを記載番号通りに押せ?」
辞令には指定されたエレベーターの番号記載されその記載ナンバーのエレベーターに乗り辞令に記載された通りに階数ボタンを6桁分押すと階数ボタンが点滅し
「ピッピピ!ゴカイカクニン」
「なんだこれ」
と電子音声が流れエレベーターが動きだした
地下5階に着くと薄暗い廊下だった
薄暗く長い廊下を歩くにつれ足取りが重くなるが先へ進んだ
すると「立ち入り禁止」と手書きの紙が張ってある看板を見つけ問答無用でそれを通り過ぎドアを見つけた
ドアにはこれまた手書きで
「未解決事件詳細保管解決課」
と書かれていた
加藤はノックを3回したが返事がなかったので
「失礼致します!」
とドアを開け中に入った
中は小綺麗だが薄暗い部屋でなぜか部屋の壁に
「パンダは禁止!危険生物」
「危険!晴れ男!」
「青空警備!新入社員求む」
などなど、謎のポスターが貼られており全てに赤いバツ印がつけられ、そして1人の女がデスクのPCにへばりついていた
「本日付けで配属になりました自分は加藤 国広です!お世話に…」
「…うるっさいなぁ…そんなでかい声出さないでよ」
PCにへばりついていた女が加藤に目をやり口を開いた
「そんなにやる気出さなくていいよ、ここは仕事なんてほぼほぼないから」
「はぁ…自分の机は…?」
「んなもん、適当に座りなよ学校みたいに席順なんか無いんだ」
顎で加藤に指図しPCを見続ける
「…では失礼します…」
そう言い女から斜めに位置した机に私物を加藤が置くと
「で?君…加藤って言ったっけ?あの報告書は嘘偽りない?」
ーもう知れ渡ってるのかー
複雑な気持ちになった加藤だが
「はい、自分は見たままの事を提出したまでです」
「ふーん…」
「で…ここの仕事とは…」
「仕事はないって…だからここは未詳零課」
「は?」
「未確認事件詳細保管解決なんて意味わかんないよね?アハ」
笑いながら女が続けた
「よっし、加藤」
「はい」
「事件があった日…何か変わった事なかった?」
「はぁ…変わった事…?」
「何でもいい、出勤前とか家出る時…どんな小さな事でもいい」
加藤は後頭部を掻きながら
「あ!そう言えば…いつもは相田さんや古宮さんと現場に向かうんですが…」
「その日に限って違った?」
「です、その日に限って和田さんや高谷さんと組めと言われて車に乗りました、俺は機捜2係だったのですが最近よく見る顔だったので機捜の人かな?と思ってましたが…違和感はありました」
「…で?他には?」
「珍しく拳銃携帯許可が発令されて…」
「続けて」
「和田さんに運転しろと言われて運転したんですが…和田さんと高谷さんはずっと無線を無視してスマホで何かを見てその都度どこに行くかを俺に支持してました。まるで…」
「行先を知っているかのよう…?」
女はPCのキーボードを凄い速さで叩き画面を加藤に見せた
「和田と高谷ってこいつか?」
「そうです!…?あれ?所属が公安に…あの人達公安?!あの…なんて呼べば?」
「…どうせもここの実情見たら…辞めるか…そんな相手に名乗る必要な…」
女の言葉を遮るように加藤が
「自分は辞めません!」
「…どうだか…ね?」
「俺は悪い奴を捕まえる為に警察官になったんです!目の前で2人も殺された…何も…出来ずに…もう報告がいってるって事は…アナタは何かご存知なのでしょう?あれは一体なんなんです?!武器を持ってるようにも思え…」
加藤が強めに言い返したがその一瞬に女が言い返した
「尻もちついてチビったクセに?」
「…!!」
「そんなビビりに何ができんのよ?ビビったくせに拳銃すら向けない…何しにいったんよ?」
その問いに加藤は肩を震わせながら
「拳銃を抜かない訳じゃないです、あの時もその男に言いましたが俺達警察官は生きて相手を確保するのが仕事です、でも…正直…ビビりました…本当に怖かった…もう死んだと思いました。でも思ったんです、ビビりの俺はあの時死んだって、死んだ気になれば怖いもんなんて…」
バチン!
加藤が喋り終わる前に女が加藤に近づき顔を叩いた
「ッイ!何するんです?!」
そのまま女は加藤のネクタイを掴みながら
「死んだ?怖いもんがない?バカ言わないで!そういう奴に限ってすぐに死ぬの!いい?!アンタが生き残れたのは偶然!奴らはそういうチカラを持ってる!連中と戦うって覚悟を持つなら怖さを捨てるな!怖かったらちゃん最低限身を守るくらいしろ!」
加藤も語気を強めながら
「だからって拳銃を向けろというんですか?!殉職した和田さん達みたく!」
「拳銃だけじゃない!ヤバイと感じたら尻もち着く前に逃げたり…」
「あの場にいなかったアンタが何を!!…?まてよ…そういう連中?チカラ?アンタなんか知ってるんだろう?!」
「聞いてばかりか?答えは自分の目で見て掴みなよ」
「…なら…意地でも俺はアイツを捕まえる!この目で確かめる!」
女は加藤の目をジッと見ると掴んだネクタイを離した
「…戸川 志津」
「は?」
戸川と名乗った女は手帳を見せた
「…戸川…志津…警部?!」
「そうだ、アタシはアンタより偉いんだ、そんなに仕事したきゃ仕事をあげる。ビビりチビりの加藤刑事、スターライトカフェのストロベリークリームフラペチーノホイップとチョコチップマシマシ買ってきて、はいダッシュ!」
「俺は漏らしてなんかない!そこは訂正してください!」
「怒るところそこなんだ?まぁどっちでもいいよ、ほらもう1分立ってるよ?時は金なり…早く!縦社会の命令は絶対!」
「承服できませんね!上司でも!」
「そういやさ?アンタが取り逃した男…特徴は?」
「特徴…中肉中背で作業着、黒縁メガネで…」
「はぁ…つっかえねぇ…そんなんそこら中に居るわ!早く買ってき…」
「そう言えば… 「なんでバレたんだ?」とか「ミカさんに報告」とかブツブツ言ってました」
その一言で戸川の目付きが変わった
「そいつは「ミカさん」と言ったんだな?!」
「…えぇ…それが」
「アンタ運がいいよ、それも才能かもね」
戸川はまたPCで何かを調べだした
「あの…」
「もう6分経過ーあと4分で買ってこないとある事ないことでっち上げてあんたクビにするよ〜」
加藤は何がなんだか分からず後頭部を掻きむしりながら
「なんだよ!もう!買ってくりゃいいんでしょ?行きますよ!もう!」
そういい入ってきたドアを思い切り開けて走って出ていった
「ミカ…ここでこの名前がでるとはね…」
戸川はデスクの引き出しを開け裏返った写真らしき物を見た
ー諦めるなって簡単に言っていい言葉じゃなかったな…ー
アナタの言葉…それでも私は諦めない
感傷に浸るのを止め引き出しを勢いよく閉め戸川は何かを調べだした
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