1分20秒小説『Nemophila』

 秋、引き出しの奥から種が出てきた。花の種。ああ――あん時のか。袋を振る。微かに音がする。ゴミ箱に投げる。スマホで動画を見て、ソファーに沈んで、天井を見て、ゴミ箱から種を拾い上げ「蒔いてみるか」


 洗濯の時しか用事が無いベランダ。隅にほったらかした丸い大きなプランター、その下に土の入った袋「まったく――」

 袋の裏を読む。季節的にも丁度いい、でも三年も昔の種、果たして芽吹くのだろうか?ま、どうでもいい。ゴミ箱に捨てるのと同じ感覚で、土に蒔く。


 冬、洗濯しようとベランダに出てふと思い出す。プランターを見る。雑草だらけだ。水もやってないのに。


 春、洗濯物を取り込もうとベランダに出る。プランター、一輪だけ咲いている。「空と同じ色の花だよ」なるほどね。確かに、空の色そっくりだ。凄く綺麗だ。くそっ!どうして咲くんだ!くそっくそっ!


 好奇心旺盛で飽きっぽい、最悪だよ。種買ってプランター買って土買って好き勝手そのまんまほったらかしにして。ボロボロにされて、このプランターみたいに雑草だらけになってしまったのに、小さな青空みたいに――くそっ!


「line、消さん方が良かったかな」

 画像送ってやりたいけど。ま、いい。一緒に住んでたのはもう、三年も前のことだしな。

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