最悪の寝起き

「マシロがそんなに嫌いですか!? 今まで何度もいい思いさせてあげましたよね!? マシロの初めて捧げたのに! マシロで初めて捨てたくせに!」

「適当で安っぽい嘘吐くんじゃねぇ! って言うか声がでけぇんだよ! ミーアトリアが起きるだろ!」

「ミーアトリアちゃんならとっくに起きて不機嫌そうにこっちを睨んでますよ! そんなことよりお金を貸してください!」

「んなどうでもいいことは後回しだここから逃げるぞ!」

「へっ?」


 やばいやばいやばい。 

 マシロに言われて気付いたが直接的な殺気を浴びせられてる。

 

 このままだと殺されると判断した俺はマシロの手を引いてドアへと手を伸ばした。


「ひぃっ!?」


 直後、ドアノブに向けて銀色のナイフが風のごとく勢いで突き刺さった。


「主様、マシロ様、おはようございます。朝からクソ騒がしくて迷惑でございますね。私、お2人のクソウザいアホみたいな会話で眠りを妨害されて大変不機嫌にございます。お塩とお醤油、どちらがよろしいでしょうか?」


 恐る恐る振り返ると、表情全体で見れば笑っているのに目元は人を視線だけで殺せてしまいそうなほどに鋭くした2人の少女が立っていた。

 古小屋の薄暗い中に溶け込むくすんだ金髪を腰まで伸ばし、その深くて濃い青色の瞳に冷めない炎を宿した白肌の少女こそ俺を主と慕う少女、ミーアトリアである。


「ちょいちょいちょい! ミーアトリア流石にナイフを投げるのは止めろ? 包丁も置こう? な?」

「目玉焼きにかける調味料の話ですか? マ、マシロケチャップ以外は食べられないんですけど……」


 こいつは何を言っているんだ。 


「左様でございますか。しかしあいにく現在切らしておりまして……そうですね、ではこうしましょう。マシロ様の手首を掻っ切って新鮮なケチャップを――」

「それ血です! 似てるの色だけです色も微妙に違います! ケチャップは美味しいけど血は鉄の味しかしませんよ!」

「鉄分、大事ですよね?」

「摂取する前にマシロ死んじゃいますからぁ!」


 こ、こいつ……!!

 普段から分厚い鎧着込んでタンクやってるくせにこういうときばっかり俺を盾にしやがって!

 殺される時は絶対こいつを道連れにしてやる。


 俺が密かに誓いを立てていると、背負っていた扉からノックが聞こえた。

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