追放勇者は毒を吐く~亡命先で作ったパーティーのメンバーたちが個性的過ぎる~
シファニクス
第1章
第1話 住んでいた家が壊された
厄介な後輩
「と言うわけで先輩。宿代貸してください」
「嫌だが?」
「お願いします! 今月本当にピンチなんです!」
とある日の早朝。
たまり場にしている古小屋でぼけーっとしていると後輩であるところのマシロが私服姿でやって来た。淡いライムグリーンの髪の先端は青いメッシュ。肩口で揃えて白いカチューシャを着けている。瞳は桃色。少し丸っこい。
外見的な特徴を箇条書きにするのならそんな感じ。齢15のうら若き女の子でありながら、俺を先輩と仰いで武術を体得しようとしている向上心のある前途ある戦士候補である。
そんなたくましい少女が、古びたソファに腰掛けて背中を背もたれに預けた俺に土下座してきていた。
「銀貨3枚で良いんです! 来月になったら返しますから!」
「あのなぁ、人にものを借りるってのはそう易々とやるようなことじゃねぇんだよ。特に金は駄目だ。金の切れ目が縁の切れ目なんて言うがな、それだけ金が入った関係は簡単に切れるんだよ」
「そ、そんなこと言わないでくださいよぉ……このままだとお金を借りる借りない関係なく私の人生が終わりかねません!」
「宿が無いだけだろうが……」
こいつ、東方の生まれでこの辺の常識が通用しない節があるんだよな。
要求する生活水準が高い。
「マシロに野宿しろって言うんですか!? 今の宿だって安っぽくて我慢ならないのにこれ以下なんて嫌ですよ! もっといい宿を要求しないだけましだと思ってください!」
「確かにそうだな、じゃあ……ってなると思ったか! どうしてお前の金の無さが故の無力を俺が補填してやらないとならんのだ!」
「言い回しがいちいち遥か彼方ですよ! いいからお願いします! おやつは1日1回にして節約しますから!」
「いや無くせよ」
「無理です! マシロは1日3食の栄養バランスのしっかりとれたご飯と3時のおやつだけは欠かせないんです! それを欠いたら人間失格です!」
「じゃあ俺は人間失格だなふざけんな! いいから大人しく野宿でも経験してやがれ!」
「いーやーでーすー!」
これだけ言っても食い下がるマシロの頭を抑えつけながら、俺は古小屋を見渡した。
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