『ミルコの左ハイ』

ミルコよ

ミルコ・クロコップよ

お願いだ

俺の後頭部にハイキックを浴びせてくれ

首から上が居間まで吹っ飛んで行くほどの

ロケット点火のような瞬間火力

加齢臭に彩られた後頭部に頼む


俺はそれを笑顔で受け止める いや

受け入れる

スマホでくだらないYouTubeを鑑賞

へらへらと笑っているこの隙に さぁ!

俺の首を刈り取れ

俺の存在を分断してくれ

心(頭部)と体(首から下)に


怒りも憐れみもいらない

勲章とも汚点ともならない

殺戮ではなく昇華

目的を見失った魂

クレヨンで描かれた天国を取り戻すため

必要不可欠なのだ

お前の蹴りが!


ミルコよ

俺を見ろ

この痩せ衰えた初老の男を

なぁ

俺に野生はあるか?

残っているか俺に

生物としての貪欲さは

微かにでも燻っているか?

分からぬだろう

お前には決して

だから蹴ってみろ

そして俺の首を吹っ飛ばし

その断面を観察してくれ


目を背ける親も

見る子もいない

黒コップ一杯の血液で

六畳間にレイヤーを掛けてくれ


そうだ

その構えだ

手を抜くな

当然左ハイで頼む

一瞬の走馬灯の中で俺の頭はきっと

ちびたクレヨンを画用紙に押し当てる自由を

取り戻す

120km/時で吹っ飛びながら


ああ

お前の構えに

力が漲るのが分かる

もうすぐ

あと少しで

俺は俺に帰れる

ミルコよ

「Hvala vam」

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