マナ
次に目を覚ました時、気を失った場所と同じ場所で再び目を覚ました。
あれからどれくらいの時間が経っているのか空は暗く、星が目立っていた。
体を起こしてみると案の定かなりの激痛が体を蝕んだ。
「いったぁっ……!」
その激痛に反射的に声が出てしまう。
上半身を起こして体を見てみると、色んな箇所に瓦礫のぶつかったであろう痣や、擦り傷なんかが痛々しい程に残っていた。
着ている服なんかもボロボロ――になっていると思ったけど、予想以上にとても頑丈に作られているのか、傷の付いている部分はあるもののひどいと言うほどではなかった。
「あっ!起きた!? 」
その声の方向を向くと、そこにはあの時助けてくれた赤髪の女性が瓦礫を椅子の代わりに積み上げて座っていた。
長い赤髪と髪と同じ色をした瞳はどちらも鮮やかな赤をしていて、服装は私と同じようにある種コスプレみたいに見えるようなワンピースを着ていた。
彼女の隣にはおそらくあの化け物を切った時に使ったであろう槍が置かれていたけど、その服装とは裏腹に、錆び付いた言うなれば粗悪品みたいな感じに見える。
「身体は大丈夫そう……? ごめんね、治療に使えそうなものとか探したんだけど何も見つからなくてさ……」
「そんな……こちらこそさっきは、ありがとうございました!」
「へへっ、あっ!そういえばまだ自己紹介もなんもしてなかったね。 私の名前はマナ。気軽に呼び捨てでマナって呼んでいいよ!」
「えっと……私の名前は有希……です。 よろしくお願いします!」
「はははっ、そんなにかしこまらなくってもいいのに。 よろしくね!有希ちゃん!」
マナはそう言いながら有希に向かって満面の笑みを浮かべた。
マナの元気はつらつな感じはあまり関わったこと無い人種な感じがして無意識に緊張してしまっている。
でも正直一人ぼっちだったさっきと比べたらこっちの方が怖くないし、安心できる。
「ところで有希ちゃんも私と同じ状況……ってことでいいんだよね?」
「はい……多分同じ状況……だと思います」
「そっか〜いきなり二人で見知らぬ土地に放り出されてると。 いや〜これからどうすればいいのかな〜」
これから、そのことを少し考えると背中が冷たくなるのを感じた。
昼に出会ったあの化け物だってもしかしたら他にもいるかもしれないし、何よりも生き抜く上で水も食料も現時点で何も無いのだ。
……一体、どうすればいいんだろう。
そんなことを考えていると、どこかからか大きな音が聞こえてきた。
ファダン―― ファダン――
大きく風を切っているようなその音は段々と大きくなると、気付いた時には私たちの上空に何か大きなものが現れた。
暗くてよく見えないけど……あれは……鳥……?
数人は乗ることができそうなくらいに大きな鳥が私たちの上空で止まっているのだ。
「ふぇっ!?何あの大きな鳥!?」
マナも見上げながらとても驚いているみたいだった。
すると上空の鳥はゆっくりと地上に降りてきた。
その様子を見てマナは有希を後ろに下げて横にあった槍を手に取った。
それからすぐに鳥は着陸して、一時の静寂が流れた。
ただ、その膠着状態もすぐに解けることになった。
「よっと!」
そんな声を出しながら一人の少女が鳥から飛び降りた。
「女の子……?」
マナがそう呟きながら私とマナはずっとその少女のことを見つめていた。
とても長く、それでいてとても丁寧に手入れされているであろう綺麗な青髪、そして髪と同じ色をした美しい瞳をしている。
同じく青いドレスアーマーに身を包み、腰にはおそらく剣を携えていた。
まるで人形のような美しい容姿にある種釘付けになっていると、いきなり隣にいた大きな鳥が光り始めた。
するとものの三秒もかからずにその光は形を変え、鳥の形から人型へと変化し、気付いた時には青髪の少女の隣にもう一人女性が立っていた。
亜麻色の髪は短く整えられ、外にハネている。マナや青髪の少女とは違ってつり目になっていてクールな印象を受ける。
動きやすそうな裾の長さが短い服に上着を羽織り、腰の方に短めな剣がチラリと見えた。
そして何よりその女性の印象に残った場所があった。
それは猫……と言うよりは『狐のような耳と尻尾が生えている』ことだった。
作り物とは思えない程の精密さ、それに何よりあの大きな鳥が人間になったこと。
少なくともここが『普通の場所では無い』ことは信じたく無くても信じてしまうほどに有希はいろいろと経験しすぎてしまった。
私たちが動揺していると、一番最初に喋りだしたのは狐耳の女性だった。
「私の名前はフェルミ、あなた達を迎えに来たわ」
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