タケノコ踏み。

 トテトテと歩くタケノコ。

 コミカルな足の生えたタケノコ。


 これは仕方ない。かわいいもん。

 全人類がタケノコ派によって統一され、世界から争いが無くなるのもそう遠くないだろう。


 まぁ、でも、踏むんですけどね。


 近づいてきたタケノコを足で小突き、転ばせる。そして踏む。

 緑の粒子に変わり、タケノコが消える。後に残る魔石。


 スライムと同じで楽に倒せる。足が濡れない分こっちのがイイね。

 このままどんどん魔石を集めていこう。よろしく、タマ!


 自分の思いを汲み取ったのか走る出すタマ。

 後を走って追いかける。


 ここ数日モンスターを倒して来たからか、体が動かし安くなっている。

 モンスターを倒すと探索者はだんだんと強くなっていくらしいから、自分もちょっと強くなっているのかも。

 

 どうせならレベルアップ形式でステータスポイントとかが割り振れたら面白かったのになぁ。


 素早さ極振りのNINJAに俺はなる!   


 と妄想。



 なれない者はなれない、出来ないことは出来ないので魔石集めに意識を戻す。

 

 たんたんとタケノコを踏んでいく。

 タケノコを踏む。踏む。踏む。


 魔石を拾う。拾う。拾う。


 



 途中、何度か休憩を挟み、タケノコを踏み続けること7時間。

 魔石も170個程集まり、後ラスト1時間がんばるぞー!と気合を新たに入れてタケノコを踏む。踏むとポロリ。


 魔石の横に転がる半透明の玉。

 

 なんだこれ?と手に取ってみる。

 玉の横に現れたウィンドウを読む。



 スキルオーブ〈工作〉

 使用すると工作のスキルを得る。

 


 おー、ゲームでいういわゆる生産系のスキル?かな?


 ドロップするのは笹の皮だけとネットには書かれてたけど……


 もしかして激レアドロップ?

 そうにちがいなねぇ!

 

 歓喜。

 運が向いてきた。

 笹の皮は一つも落ちなかったけど。

  

 無くさないようにリュックの奥に入れておく。

 変わりにお酒を取り出そうとするが、昨日スーツ姿の男に殺されたかけたことを思い出す。


 「何が起きるか分からない、やっぱりシラフでいよう。」


 「そんな判断で大丈夫か?」


 「大丈夫だ、問題ない。」

 

 自問自答。

 言葉にして自分を納得させる。

 断腸の思いで祝い酒を諦める。


 


 あと一時間がんばる予定をキャンセルし帰ることにする。

 帰り道が分からないのでいつもどうりタマに案内してもらい、ダンジョンを出る。

 

 昨日の魔石も合わせて買い取ってもらい合計で2万300円受け取る。

 

 結構いい感じ。

 もう少しペースを上げれば一ヶ月ぐらいで滞納した家賃を支払えそう。


 スーパーで夕飯の梅干しとワカメを買い帰宅。

 タマに迎え入れてもらい部屋に入る。



 茹でたワカメをつつきながら今日ドロップしたスキルオーブについて調べる。

 調べても調べても、タケノコがスキルオーブを落とすという情報は見つからなかった。

 

 そもそもスキル〈工作〉自体が、存在が確認されているだけで、どのような能力なのかが一切不明となっている。

 


 これはやばい。

 ちょっと表に出せないものかも。



 

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