第115話 ピザって10回
自由都市の北部に広がる大森林は広大であり、その最奥を山脈で塞がれている。
北側に弧を描き東西に走る山脈は峻険であり、人類の侵入を阻んでいる。
その山脈の北部に円卓都市は位置している。
連合諸国は山脈に沿い円卓都市の東西に連なり、やがて大森林と山脈を迂回する形で自由都市から伸びる東西の街道に繋がる。
大森林と山脈を円卓に見立てて連合と自由都市との良好な関係に例えたのは発足当時の吟遊詩人であり大当たりした一節でもある。
さてそんな円卓都市の名物料理はピザである、なんでも円卓を模した形状は縁起が良いとか何とか。
そうと来たら楽しむしか無いじゃないですか。
パレード中にザッキーが行ってた聞き取り調査により地元民オススメのお店は既にピックアップ済みだ。
なんて有能なコミュ力お化けなんざんしょw
今回のお店は明るい雰囲気のレストランバー、1階にメインのカウンター席がありズラリと酒瓶が並んでいる。
脇には調理シーンが見て取れるセミオープンキッチンとなっていて奥にはピザ釜も覗ける。
中二階に案内されるとそこにもミニカウンターとピザ釜が……こいつは相当本格派のお店の様だ。
メニューにあるタイプは2種類、耳がふかふか肉厚タイプと薄焼きタイプだ。
肉厚タイプはボリューミーで腹持ちも良くワインに良く合うので定番としてセットでオススメされる。
薄焼きタイプはクリスピーな食感が楽しく、後を引く軽めのスナック感覚は自由都市名物キューバリブレとの見事な相性を発揮する。
ま、どっちもビールやエールがいいんじゃ!ってのも否定は出来ないw
腹持ちの良い肉厚タイプこそ兵糧として優秀であり騎士の国に相応しい!と言う一派もいる。
焼き立てが命のピザに兵糧もあったもんじゃなかろう!サックリ手早く食べれていざ出撃と常在戦機の気風に堪えうる薄焼きタイプが騎士国の誇りや!と言う一派もいる。
この手の派閥争いはどこにでもあるらしいw
ちなみに美味しいピザを出す店なら是非ともシンプルなものを注文してみて欲しい、シンプルが故に奥が深いのだ。
個人的にツボったのは薄焼きタイプの「フレッシュトマトとオレガノ」だ。
シンプルにカットしたフレッシュトマトとチーズを乗せただけなのだが、熱々のチーズに蓋をされ熱せられたトマトは青臭さなど感じさせずに酸味と旨味が混然としたソースに変化している。
鼻から抜ける様なオレガノの風味がコクのあるチーズと共演し、クリスピーな食感が次の1枚へと手を伸ばさせる。
合間合間に挟むキューバリブレとの相性もバツグンだ。
さて次のピザを待つ間に軽く周囲を眺めてみる。
中二階からは店内も見下ろせるが表通りも見下ろせる様になっている。
色んな店が並んでいて所謂飲食街のメインストリートの様だ。
雑多な街並みを眺めてると“あの店”の事を思い出す。
「どうしたんですか?浸るんなら念話でモノローグを流してくれないと絡みづらいですよ(苦笑)」
ザッキーが絡んできやがったw
「いや、街並みがエジプト屋があった場所と雰囲気似てるなー、とw」
「出たwwwエジプト屋www」
「意外ですね、なんかこう小ぢんまりと言いますか人知れずひっそりとやってる隠れた名店ってイメージでした(苦笑)」
「確かに知る人ぞ知るって空気はあったけどな、なんつーかこう雑多な街並みに埋もれる感じで目立たない店構えではあったなw」
「そんでもって近所の学生御用達だったんだっけか?www」
「学生さん達は代々受け継ぐ情報が濃いですからねぇ(苦笑)」
「ちなみに飯屋が乱立してた一角は“阿部ニュー横丁ストリート”って呼ばれてたんだw」
「え、何?wwwちょっと情報量多杉www」
「アベニューで横丁でストリートなんですか?(苦笑)」
説明しよう、元々区画整理される予定地に飲食店が多数入ってた阿部ビルと言う老舗のビルがあったのだ。
そこを中心に飲食店が集まりだし、誰が言い出したのか“阿部ビル横丁”とか“阿部横丁”とか呼ばれる様になっていた。
区画整理に合わせる形で阿部ビルも改装、新たな飲食街は“阿部ニュー横丁”と公式採用されたのだが区画整理により道路が交差して十字路になったのだ。
結果としてその界隈を“阿部ニュー横丁ストリート”とカオスな名前で呼称される様になったのだ。
「そんでさ、エジプト屋のメニューにもピザがあったのよ。当然ここみたいに立派なピザ釜があるわけじゃあ無いんだけどさw」
「逆に置いてたら怖いわwww」
「もし置いてたらタンドールとかもあったんでしょうね(苦笑)ところでどんなピザだったんですか?」
「んー、シンプルなミックスピザだけど不思議と美味かったんよな……あ、ちなみにメニュー名は“ピッツァ”ねw」
「やかましーわwww」
「(苦笑)」
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