焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!!

雷覇

第1話:幽閉者への来客

焔木海人(ほむらぎかいと)は社の前でボーっと外を眺めていた。




「もう随分たったな・・・」




海人はボソッと声を出した。この社に幽閉されてからかなりの日数が経つ。


朝からひたすらに身体を鍛え、木刀を振り、読書に励むだけの毎日。


他にすることもなかったからとはいえ愚直にそれらを繰り返したのは


身体からにじみ出る怒りを抑えるためでもあった。




自分の感情が高ぶってくるのを感じたら意識がなくなるまで身体をいじめつくし


膨大な知識を頭にいれ強制的に眠りについていた。




「最近は昔ほど怒りは沸いてこない。もう一族のことなんてどうでもよくなったのかもな」




海人はここに自分を幽閉した焔木の一族のことを思い出していた。


まだ10歳であった自分を幽閉するというのにその顔に罪悪感を持つものは


ほとんどいなかった。剣や術の師匠は哀れみの視線を向けてはくれたが結局は


一族全体の決定に逆らうことはなかった。




「まあ落ちこぼれの危険人物を幽閉するんだから当然なのかもな。今ならちょっと気持ちがわからんでもない」




海人は剣士としても術師としても落ちこぼれであった。


なぜか自分の力をコントロールできなかったのだ。


焔木の一族は氣の力を操り魔を退治する一族。その氣の力を操れぬものなど恥さらしでしか


なかった。




それでも追放されずに一族にいられたのは潜在的に強大な力を秘めていることがわかっており


いつか才能が開花するのではと期待されていたからだ。


だがある日、海人はある事件を起こした。氣の力を暴発され門下生数名を半殺しにしてしまったのである。その後は流れるように処分が下り、社への封印ということになった。


自分にも言い分はあったのだが誰も信用してはくれなかった。実の父親までも。




「このまま死ぬまでここにいるのだろうか・・・それも悪くないか」




実際のところ幽閉とはいえ生活はそこまで悪くはない。自分は外に出れないが他の者は自由に社に


入ってこれる。ここはあくまで海人だけを幽閉する社なのだ。


師匠たちがたまに気を使って手土産をもってくることくらいだ。


他の者とはもう誰も会っていない。父親とも幽閉後は一度も会っていなかった。




海人は家に戻りそのまま昼寝をすることにした。


そのままウトウトと眠りに入ろうとすると家のドアがノックされた。




ドンっドンっドン!




「ごめくださーい!いますかー!!」




何とも荒々しいノックとけたたましい大きな声であった。


聞き覚えのある声の様な気がしたが、相手にするのも面倒なのでそのまま眠りについた。




「いないなー?そんなことないよねー!勝手に入るからね。お邪魔しまーす!」




足跡が近づいてきた。荒々しい足音と静かな足音の2つ。


どうやら2人組のようだった。




「(マジかよ。家主が許可してないのに入ってきやがった・・・)」




止める間もなく入ってきた無骨な来訪者にウンザリしながらも襖が開く瞬間を寝ながら待った。


襖が開き海人の姿を見つけると一人の女が怒った顔で語りかけてきた。




「やっぱいるじゃない!何で返事をしないのよ!?」




髪をポニーテイルにした女。「焔木刹那(ほむらぎ せつな)」が開口一番怒鳴り込んできた。




「刹那か・・・久しぶりだな。ここに来客なんて珍しいんでね。どう対応したものか判らなくてね」


「それは・・・そうかもしれないけど」


「刹那そこまでにしなさい。あなたにも礼儀がなかったわよ」




隣にいた女が刹那を抑えた。




「お久しぶりです海人」


「ああ・・・久しぶりだな瑞穂」




同じ一族である「焔木瑞穂(ほむらぎ みずほ)」は当主の娘の一人であり


次代の党首候補の一人であった。


だが海人は瑞穂にあまりいい印象を持っていなかった。




「なにか用か?ここはお嬢様がくるようなところじゃないぞ」


「あんた瑞穂に何て口を叩くのよ!」


「いいのです刹那。海人・・・あなたが私を良く思っていないことは知っています。それを踏まえてあなたにお願いがあるのです」


「何だ?聞くだけは聞いてやるよ」


「あんたねぇ!」


「刹那はしばらく黙っていて。話が進まないわ」




激高しそうになる刹那を抑えて瑞穂は言葉をつなげた。




「まもなく次代の焔木の当主が選ばれることになります」


「ふーん。それで?」


「私は当主へ立候補します」




瑞穂は海人をまっすぐに見つめ意思の強い瞳をこちらに向けてきた。




「やればいいじゃないか。誰が当主になろうと俺の知ったことじゃない」


「関係はあります。あなたは私が当主になれるよう協力してください。私が当主になった暁にはあなたを自由にすることを約束します」


「協力って一族の落ちこぼれである俺に何ができると?」


「あなたは力のコントロールができていないだけです。秘められている力は計り知れません」


「それも使えなければ宝の持ち腐れだ」


「そうね。あなた弱いもの」




刹那に毒舌を吐かれてジロリと睨んでいると




「何かがあなたの力の枷になっているのでしょう。それを外すにはかなりの荒療治が必要となります」


「どうしろと?」


「あなたを死地へ送り込みます」


「あん?」


「死ねばそれまで。生き残ることができればあなたは自由へと近づきます」




これより止まったままであった海人の時は動き出すことになる。


その先には過酷な運命が待ち構えていた


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