5 風の街へ 大好きだよ。
風の街へ
大好きだよ。
そこはとても不思議なところだった。
そこはとても美しいところだった。
風の街と小さな白い駅の小さな看板にはそんな文字が書いてあった。
駅には美しい緑があり、年老いた一匹の猫がいた。その代わり人の姿はどこにもなかった。無人駅だ。そんな古い作りの掃除の行き届いている綺麗な木造の駅を降りると、宝は一人、駅でお金を払い、(お金を置く箱のようなものがあった)その駅を出た。
すると、世界は緑色になった。
すべてが緑色の世界だった。
不思議なところ。
宝は思った。
こんなところに、葉ちゃんはいるんだ。
そんなことを思いながら宝は空を見上げた。生い茂る木々の間から見える空は電車の中で見た色とおんなじ青色だった。
本当に晴れた青色の空。
本当の青色がそこにはあった。
「よし」
宝は気合いを入れる。
それから土色の道の上を一人で歩き出した。
手には白い手紙を持っている。
それは葉ちゃんがくれた手紙だった。
その手紙には、『宝の地図』が同封されていた。
その葉ちゃんの(いろんないたずら書きのある)手書きの宝の地図を見ながら、宝は歩く。
葉ちゃんのいるところまで。
自分の世界で一番、大好きな人がいるところまで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます