魔術の存在する世界。

えーすえいち

マールク国首都ドメルにて

第1話 出会い

 今日も魔獣が村に現れた。

 お兄ちゃんと村の人たちを危ない目に合わせるわけにはいかない。村の近くにやってきていた魔獣数体を得意の土魔術を使って討伐する。地中の土石を利用して石の塊を生成し、しっかりと魔力をまとわせてから魔獣へと勢いよく射出する。

「ストーン・・・ショット!」

 魔獣の纏う魔力の鎧を貫き、魔獣を1体ずつ確実に仕留めた。見える範囲の魔獣を倒しきったが昨日と比べると量は少ないため、周りに潜んでいるはずだと考え警戒は解かずいつでも魔術を使えるように杖を構えておく。


 お兄ちゃんの話によると、数十年前までは魔獣はおらず魔術師といった職業も無かったらしい。俺のお母さんとお父さん、そしてお兄ちゃんは魔術が使えず、お母さんとお父さんは俺とお兄ちゃんを魔獣から逃がして亡くなった。もう少し衛兵団が来るのが早ければ、お母さんとお父さんも亡くなることは無かったのだろうかと何度も考え、その度に泣いた。あの日俺が助けてあげることができたら、あの日もっと衛兵が早かったら。でもお母さんが最後に遺してくれた言葉をその度に反芻する。


『お兄ちゃんを、守ってあげてね』


 魔術が使えないお兄ちゃんを守れて信頼できるのはこの村では俺ともう一人くらいだ。絶対に守って見せる。改めて杖を握る手に力が入るのと同時に、後ろから親友の声が聞こえてきた。


「キョーヤ!」

「ナオキ、やっと来たのか。とりあえず村周辺で見える範囲の敵だけは倒しておいたよ。」

「ごめんなキョーヤ、ホントについさっきまで寝てて…」

「別に良いけどさ、俺がいなくなったらこの村と俺のお兄ちゃんを守れるのはお前だけなんだからな。生活リズムくらいは直しとけよ。」

「だからごめんよ~。というか、魔獣は倒したんでしょ?なんでまだ戻ってないの?」

「昨日見た魔獣の数より少なかったんだよ。昨日まではちっちゃいのが5体くらいだったけど、今日のは3体しかいなかった。」


 若干だらしなくてホントに一人で暮らせているのかと心配になる時もあるが、戦闘においては頼りになるし同年代で同じ魔術師ということもあってかなりの信頼を置いている親友だ。・・・少なくとも俺は親友だと思ってる。


「なるほど~、どっかに潜んでるかもってことね。じゃあエアレーダ使って探すか。」

「頼んだ。」

「・・・うん、見っけた。俺から見て右後ろの森の中に2体隠れてる。」

「おっけー、倒しに行くぞ。いつも通り後ろは任せてるからね。」

「了解!遅れた分しっかり頑張るからな~。」


 ナオキの得意基礎魔術である空魔術を使ったエアレーダは抜群の精度を誇る。いつものようにナオキが敵を見つけてから、俺がストーンショットで傷を負わせてから2人で魔獣を倒していく。見つけた魔獣を倒し終わり、ナオキが魔獣が消えていくのを確認してから俺に話しかける。


「よっし、討伐完了~!キョーヤ、怪我無い?」

「ダイジョブ、それよりももういないよな?」

「う~んと・・・うん、いな・・・えっ!?」

 何か異常があったのか突然ナオキが大きな声を上げる。

「どうした、何かあったか?」

「正面の方に人がいる、感じがする!わかんない!」

「えっ!?村の人か!?」

「いや、わかんない・・・。とりあえず、村の人だったらやばいし、一緒に行って確かめよう。」

 ナオキが見間違えることはほとんどない、もし村の人だとしたらまぁまぁまずい・・・。ただこっちの森には別に木の実があったり、川があるわけでもない。何でこんなところに人が・・・?


 少し違和感を感じながらもナオキと一緒に、人がいると思われる場所へと急いで向かう。お兄ちゃんにも助けることができるのなら助けることを迷ってはいけないと言われた。それで助けて悪者だったらどうすんだとは思うが・・・。

「あの岩の裏にいるはず!」

 とか考えていたら着いた。相手が敵対してこないとは限らないため、一応いつでも攻撃ができるように構えておく。ナオキが岩の裏を確認すると、


「大丈夫で・・・!?うわぁ!なんだコイツ!?」

「どうし・・・は!?」

 尻もちをついて驚いたのを見てから、なんだと思いナオキの元に駆け寄るとそこにはの褐色肌の女の子が横たわっていた。それだけならば心配が勝ってすぐに助けることもできたが、その子は一糸纏わぬ姿で横たわっていたのだ。しばらく呆然としてその女の子を見てしまっていた俺たちだったがふと我に返ってようやく言葉を発した。


「な、何で裸なの・・・?」

「いやそれも疑問だけど・・・何でこんなところに女の子が?」

「そ、そうじゃん!というか、倒れてるし起きてないし!!早く助けなきゃ!」


 ナオキが女の子を抱えて、村の方へと走っていく。何故こんなところに倒れていたのか、何故裸だったのかと色々と聞きたいこともあるが目を覚ましてから聞くことにしよう。

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