賭け

しょうりん

プロローグ

 人類が母なる大地を追われたのは、今から約2000年ほど前のことと言われている。


 戦争という名の悪魔。

 全ては、それの仕業だったのだと。


 ある日、一発の弾道ミサイルが空へと打ち上げられた。

 誰が、何の目的でそれを成したのかは、資料の残らぬ今となっては、研究者達の空想の中の産物に過ぎない。


 だが、白い雲を描きながら空を切り裂いて進むそれは、世界最大と言われる核燃料処理施設を直撃。爆発後、僅か24時間の間に、地上世界は汚染され尽くしたと言う。


 勿論、遥か昔に地上を捨てた我々に、当時の全てなど知りようもない話しだ。


 が、研究者達は、長きに渡る研究の結果、今の文明が発達する前に、地上には高度な文明があった事を証明した。


 そして、無意味な争いを続けていた世界があったと言う事も。


 無意味な争いは、人が愚かである限り果てしなく続き、終結はない。そして何時かそれは、恐ろしい破滅を招く。


 全てを失い、楽園から追われた人類は、やがてその行き場を地下に求めた。


 そして生き残った人々は、過去の失敗を二度と地下へ持ち込まないようにと、失われた世界の記憶を深く心に刻んだ。


 やがて、彼らの努力は実を結び、ただの洞窟に過ぎなかった場所が、次第に都市と呼べるものへと発展していった。


 今現在、百以上もあるといわれているエリアが、それだ。


 遥かなる時が刻まれ、人々は地上での生活を忘れた。彼らに安全と豊かな生活を保証してくれるのは地下であり、今なお汚染されつづけている地上には、恐ろしい戦の記録と恐怖しか残されていないのだ。


 かつて地上には、楽園があったという。しかし、それを覚えているものは、もはや存在してはいなかった。

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