第12話 自作の歌


「なあ。曲って作ったりってするのか?」


 俺は純粋な疑問を投げかける。

 路上ライブをしている人って自作の曲を作っているという印象がある。


 偏見なのかもしれないけれどちょっと気になった。


「私は作ったことない。」

「そうなんだ。」

「私はそういうの苦手なんだよね。なんか興味あるの?」

「まあね。」


 学校でギターを弾いている妄想をしているときにふと思った。

 自分の歌があったらカッコよくねって。


「難しいよ。私は。」

「そっか。」

「でも慶太くんならできるかも。」

「何で?」

「楽器が使えるからだよ。自分の思うように曲が作れるから。私は楽器も使えないし機械音痴だから。」


 最近スマホのアプリで曲を作れるというのを聞いたことがある。

 一回チャレンジしてみたけど上手くできなかった。


「無理にデジタルでやる必要はないよ。慶太くんはギター使えるんだからアナログでいいと思う。」

「なるほどね。」


 夏菜子からアドバイスをもらって俄然やる気が出てきた。


「でも歌詞ってどうしたらいいんだろう。」

「ストーリーっぽく書いてみたらいいと思う。」

「たとえば?」

「ラブソンならね、君と出会った。一目惚れした。振られた。みたいな大きなストーリーを決めてそれを膨らめせてく感じかな。」

「振られちゃうんだ。」

「そこは何でもいいでしょ。」

「確かにな。」

「出来たら私に一番に聞かせてね。」

「でも俺音痴だけど。」

「いいのいいの。慶太くんが歌ってくれないとどんな感じの曲かわからないでしょ。」


 それはそうだ。

 でも俺は音痴だ。

 歌を聴くのは好きだけど歌うのは嫌い。


 でもとにかく作ってみたい。


 どういうストーリーにしようか。


 今まで俺がしてきた恋愛の話とか。

 いやだめだ。ろくなことがない。

 告白されて断ったら泣かれたり、浮気されて別れたり。


 何だか思い出しただけでも泣きそうになる程恋愛に良い思い出はなかった。


 今の状況を歌ったりとかかな。

 でも学校の俺の様子なんか歌ったら愚痴まみれの曲になってしまう自信がある。


 それではだめだ。

 せっかくの曲なんだから。

 私情の愚痴を並べただけの曲なんて誰が聞きたいんだろうか。


 あ。一個いいストーリーがあるじゃないか。

 夏菜子と出会うストーリーを音楽にすればいいんじゃないか。


 まずは夏菜子に出会う前までの感情。

 これは少し落ち込んでいる感じの方がいいのかな。


 そっから夏菜子に出会う。

 出会った時一番覚えているのは隣のブランコに座ってくるまで気づかなかったことかもな。


 曲を考えているといつのまにか3時間経っていた

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