第6話 なんの曲歌おうか


「何の曲歌おうか。」


 私はつくなりそう言った。

 明日のライブが楽しみで仕方ない。


 今までの私だけのライブとは絶対違う。

 そんな勘がずっとしている。


 自分でやっていても感じる。

 こんなにも相性がいいのかと。


「僕は何でもいいよ。コードを見れば大体何でも弾けると思うから。」

「そうなんだ。じゃあ私が何となく決めてみる。」


 なんかすごいな。

 流石にコード見ただけで何でも弾けないでしょ普通。

 尊敬するな。


 私は毎回同じようなセットリストなのでそれを彼に見せて見た。


「これがいつもやってる感じのリストなんだけど。」

「あー。全部弾いたことあるかも。」

「え。すごい。」

「でもだいぶ前に弾いたっきりの曲もあるからちょっと練習しないと。」

「そんな前からやってるんだね。」

「小6ぐらいかな。」

「へーすごいね。」

「あの時はまだ両親も仲良かったからさ。毎晩俺の練習に付き合ってくれたりしてさ。」

「そうなんだ。」


 色々尊敬する。

 すごいとしか言いようがないよ慶太くん。


「て言うかさ。」

「なに。」

「これだけ歌って何分なの?」

「2時間ぐらいかな。」

「2時間!?」

「うん。」

「結構長いんだね。」

「まあね大体みんな1時間から2時間ぐらいかな。」

「そうなんだ。」

「私は普段1時間だけど慶太くんがいるので2時間。」

「いや1時間でいいよ。」

「ううん。みんなに慶太くんのギターを聴いてもらわないと。」

「お、おう。」


 そうこれは私が仕組んだイタズラ。

 イタズラってほどではないけど私が彼と一緒に長く路上ライブしたいって思ったから。

 この一回限りかもしれないんだもの。

 そりゃやれるだけやりたいわ。


「いやかな。」

「まあ夏菜子さんが言うなら。」

「やったあ。」


 慶太くん。とにかく優しい。

 こんな私のわがままを受け入れてくれるなんて。


 とにかく明日が楽しみで仕方ない。


 私たちは明日のためにちょっと練習することにした。


 何度も言うけど本当にギターが上手いと感じる。

 どうしてこんなに上手いのだろうか。


 そしてようやくやってきた土曜日。

 慶太くんの路上ライブ出演が決まってから2日しか経ってないけどとんでもなく興奮している。


 楽しみすぎて集合時間より早く到着してしまった。

 ドキドキしながら彼を待つ。


 集合時間になった時慶太くんは入ってきた。

 そしてその顔はとんでもなく緊張していた。


「ねえちょっと緊張しすぎじゃない?」

「そ、そんなことないよ。」

「そう?まあ行きましょ。」

「う、うん。」


 おお。すごい緊張している。

 彼が緊張しすぎてこっちまで緊張してくるよ。


 まあでも無事に終わるといいな。

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