第5話 一緒に路上ライブしませんか


「一緒に路上ライブしませんか。」


 え。まじ?俺が?

 俺はそんなに自信はない。

 夏菜子さんは上手、歌いやすいと言ってくれたが本当にそうなのだろうか。


「本気で言ってますか。」

「もちろんですよ。」


 本気だった。

 どうするんだこれ。


「俺にできますかね。」

「出来ます!私が保証します。」


 いやいや。保証されてもな。

 俺が夏菜子の路上ライブに出て不愉快に感じる人がいないだろうか。

 そこが1番の懸念点である。


「お願いします。」

「僕なんかが出て大丈夫ですか。」

「はい。全然大丈夫って言うか逆にすごい助かる。」

「はあ。」


 どうしようかな。

 やって見てもいいが…。

 クラスのやつに見つかったらどうするんだよ。

 いやクラスメイトに俺の仲間いなかったわ。


 悲しい1人ツッコミをしたところで何だかやる気が出てきてしまった。


「一回だけでもいいんで。」

「じゃあとりあえず一回だけやってみようかな。」

「やったぁ。」


 夏菜子さんは小学生のように飛び回った。

 やっぱりなんか可愛いな。


「いつやりますか?」

「まあ僕はいつでも。」

「私は毎週末やっているのでそこでやりませんか。」

「わかりました。」

「あ、あんま期待しないでください。」

「何がですか?」

「私のライブあんま立ち止まって聞いてくれる人いないので。」

「そうなんですか。」

「はい。5人いればいい方です。」

「そうなんだ。厳しい世界ですね。」

「そうですね。」


 あまり立ち止まって聞いてくれる人はいないとのこと。

 やっぱりこの世界が非常に厳しいと言うことがよくわかった。そりゃそうだよな。


 でも少し助かるかも。

 大勢いたら緊張しちゃうし。


「じゃあ明後日。今週の土曜日に初めてのライブをしましょう。」

「わかりました。」

「明日は何を歌うか決めましょう。」

「ここでいいですか?」

「もちろんですよ。」

「じゃあまた明日。」

「バイバイ。」


 夏菜子さんと別れた後何だか緊張してきた。

 俺が街行く人に対してギターを弾くなんて数日前まで思ってもいなかった。


 どんな歌を弾こうか。

 夏菜子さんは恋愛ソングをよく歌っている。


 俺はコードを見れば大体わかる。

 だから夏菜子さんの歌いたい歌を歌ってもらおう。


 スキップしながら家に帰った。


 翌日の学校では明日のことしか考えてなかった。


 どれくらいの人が聞いてくれるのだろうか。

 どれくらいの人が感動してくれるのだろうか。

 感動は求めすぎているかもしれない。


 余計なことばっかり考えていると先生に「ちゃんと聞いているのか。」と怒られてしまった。

 そりゃ聞いていませんよ。

 明日のことで手一杯なので。


 学校が終わると速攻で家に帰って8時に着くように今日も公園に向かう。

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