【エッセイ】華麗なる一発逆転を狙って ~オーストラリア留学~

弁財綾乃

第1話 すべての始まり

 40代半ば、シングル、未婚、子どもなし。停滞した自分の人生を大きく好転させたいと、昨年、オーストラリアへ飛び込んだ。願いは、運を飛躍させたい。その一心のみ。あんなに謳歌していた自分の人生が、まさか40代になって輝きを失うなんて夢にも思わなかった。環境を大きく変えることで良い運気を呼び込めるなら、半年ぐらい仕事を休んで収入がゼロになってもいい! その後に懸命に働いてお金を取り戻せば良いのだから。神さま、仏さま、どうかわたしに希望の光を。Help meeee!!!


「あなた、仕事が減っていくわよ。今のあなたは、草も生えていない荒野を刈り取るところがないか重機に乗って勢いよく走りながら探しているみたい。あなたが悪いとかではなく、自然と仕事が減っていく。そんなイメージが見える」。


 5年前、さる有名な占い師に見てもらったところ、こんなことを言われた。まさかね、と思ったけど、少しだけドキッとした。10年以上、フリーランスとして働いているが、心が疲弊しすぎて仕事に自分の色が出しづらくなってきていた。しかも、仕事が入ってくるスピードが心なしか落ちてきたような、今までにない違和感も覚え始めていた。表面上は、何も変わらない。仕事は順調。だから、誰にも知られていない。自分だけがちょっとだけ予感している、これから起きるかもしれない未来のこと。


「今のうちに早く手を打った方がいい。このまま福岡にいても、仕事運も恋愛運も落ちていく一方よ。できるだけ早く、遠くの場所へ引っ越して、最低半年間はその土地で暮らすと運気が上がってくるから実践してみて。できれば海外がいいけど、無理なら東京か大阪か。国内なら福岡よりも都会じゃないとだめ。できるだけ急いで」。


 ―― 3年後、本当に仕事が激減した。理由は、業務の縮小や倒産など様々だ。「まさか、本当に当たるなんて…」と驚きはしたが、その占い師からのアドバイスの後、しばらく日本を離れてリフレッシュするのもいいなとぼんやり考えていたので、正直ラッキーとも思った。


 フリーランスである以上、せっかく声をかけてもらったのに、こちらからお断りはしたくない。でも、インプットを上回るアウトプットの日々に心が枯れていき、モチベーションを絞り出すのが辛くなっていた。新しいことに触れて、たくさんのことを見聞きしたい。仕事上の対人関係にも、もううんざり。そんな中、真新しい環境に身を置きたいと心が渦巻いていた。

 

 心の疲労度が限界に近づいてきたので、以前仕事でお世話になった風水師の先生に相談し、出国の目標を翌年2023年6月に定めた。さすがに1年間海外暮らしだと日本での仕事を完全に失う気がしたので、目標は半年。以前、占い師に言われたことをそのまま風水師の先生に告げると、「風水では、引っ越し先に3か月間滞在すれば運気が変わるって言われているの。ましてや半年間もいれば十分よ」と背中を押してもらえた。  

 

 明日でも海外に拠点を移したい衝動に駆られたが、取引先への礼儀上、こちらから仕事を断るのであれば、最低4カ月前には告げたい。2023年の2月に取引先に告げて、6月に引っ越しかあ! と胸が躍った。行き先は、以前から気になっていたヨーロッパ! ヨーロッパのどこにしようか、資料集めをしていた矢先に、思わぬ展開が起こる。

 

 突然鳴った電話。取引先からの予告のない電話だった。内容は、外注費の節約のため、社内で業務を賄うことになり、年内いっぱいで契約を終了したいとのこと。

キラリ~ンとわたしの目の奥が光った。6月の海外行きを前倒しできるかも! 浮足立ったわたしは、電話を切った後に風水師の先生に連絡を取り、6月よりも前の時期の運勢の良い日に出国できないか相談をした。結果、3月の2週目に出発することに!     

 この時期の移動なら日本の真南がベストの方角ということで、泣く泣くヨーロッパを諦めてオーストラリアに決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る