第6話 2チャンネル

「ただいま…」


 ドスン!ドスン!ドスン!


 怒ってる…。緊張感が高まって、もう駄目だと思った瞬間、既に鬼のような形相で健二が立っていた。


「勝手なことをしやがって!」と突き飛ばされた。

「ごめんなさい」

「スーパーに行くとか嘘をついてるんじゃねーよ!家出を3回目もしやがって!家出は、もうMAXになっちまった!クソっ!計画の練り直しだ!」

「計画の練り直しって何?テレビのゲームのこと?私とは関係ないよね?」

「もう家出なんてするんじゃねーぞ!」

「会社に行ってた健二が何で私の行動がわかるのよ!私、家出なんてしてない!ほら、ちゃんと夕飯を作って待ってた!」


「嘘をつけ!俺は見てたんだ!」

「見てたって?どうやって?」


 健二は、会社のカバンから何かを取り出した。テレビのリモコンだが、とても古い感じがした。


「それ、ウチのリモコンじゃないよね?」

「結婚してしばらくした頃、お前が自殺した時に、突然どこからか落ちてきたんだ…。このリモコンとモニターさえあればどこでもお前の行動を見れるんだ」


「そんな…」と私はとても驚いたが、すぐに疑問が浮かんだ。

「ちょ、ちょっと待って!私が自殺したって?いつ?」


「やっぱり覚えてないんだな…。」と言って健二は静かに話し始めた。


「結婚してすぐに俺さ、仕事でミスしてクビになりかけたんだ。それでどうして良いかわからずお前に当たってた。お前の辛そうな顔を見ると何故かホッとしたんだ。辛いのは俺だけじゃないって思えた。それからしばらくして、仕事のミスも何とかなりそうだとホッとした頃、お前は、風邪を引いたから薬を飲んで先に寝ると言ったんだ。2、3時間遅れて俺もベッドへ行ったら、空の薬の瓶が何本も落ちていて、お前の呼気を確かめたが…息をしてなかった」


「ウソ…」

 私は何も覚えていなかった。


「その後、どうしたの?」と私は恐る恐る健二に聞いてみた。


「泣き崩れていたら、リビングで何かが落ちる音がして行ってみたんだ。何が落ちたかわからなかったんだけど、ソファーの辺りまで行ったら、何かを蹴飛ばしたんだ。それがこのリモコン」


そう言って、私にリモコンを見せてくれた。いつの時代のリモコンだろうか…とても古めかしい感じだった。


「捨てても良かったんだが、何のリモコンだろうな…?とカチカチとボタンを押したんだ。そしたらテレビがついてさ。《時子を生き返らせたいなら2チャンネルを削除せよ》って…。お前が自殺したのは俺のせいだと思ったから、もう一度、やり直したくて、書かれてる通りに操作したんだ。そしたら、何か変な夢を見たってお前が起きてきたんだ。びっくりしたよ。本当に生き返ったんだって思った。だから、もう暴力なんて止めて優しくしようと思ってた」


「夢?」

「そう、お前は、本当に熱があったみたいで、俺の暴力にも疲れ果てていて、ボーッとする頭でこのまま目が覚めなければ良いのにって言って大量に薬を飲んだ。それで記憶が曖昧になってお前の中で夢だった…って事になってたから、俺も話を合わせたんだ」

「ちょっと待って、健二が見てなかったことはどこで知ったの?それは、このテレビで知ったんだ」




 ―自殺 1回目―

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