第25話
「まぁ巫装の消費霊力量がやばい=悪いってワケじゃない。そういう巫装って、えげつない性能してることが多いから」
保有霊力も精神的な成長で増えることがあるからね~と清明さんは笑う。
そうなのか。俺も成長出来たら嬉しいな。
「さて、残りも説明していこうか。次に聞き覚えがないだろう部分は、種別のところかな?」
用紙に指を指す清明さん。俺の前で文章をなぞりながら、「ここ、じんききょうかがた、って読むんだよ」とゆっくり音読してくれた。
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発現巫装:【
種別 :『人器強化型』
媒介 :『斬撃武器限定・二本まで』
異能力 :『刃の硬質化。および超視力の発現』
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「巫装はその能力によって、四つの
一つ目は『武器強化型』。媒介となる武器の強度を上げたり、特殊能力を付与できるタイプだ。振るうのは使い手自身だから、一番使い勝手がいいよ」
ほうほう。衣服を硬くしたり自動で動かせる
でも使い勝手がいいのか? アイツは巫装に暴走されてたような?
「あぁうん、蘆屋くんは別。ていうか暴走の原因は……いやまぁそれは置いといて。
二つ目は『人体強化型』。使い手自身の肉体強度を上げたり、特殊能力を付与できるタイプだね。本体性能が上がるから死に辛くなるけど、身体の感覚が変わるから使いづらさもあるかも」
「使いづらさが?」
「うん。
「可愛いと思う」
「えぇ……」
清明さんが見たこともない顔をした。
よくわからんけど、土御門さんか。俺はご飯をいっぱい食べさせてくれたこの組織が好きなので、いつかお礼しに会いに行きたいと思っている人だ。
きっと優しい人なので絶対会うぞ。
「……とりあえず、
「ああ、確かに真緒は頼れる仲間だな。ずっと側にいてほしいと思う」
「あぁうん、それ本人に言ったら彼から彼女になっちゃうから言わないように……」
ん、どういうことだろう? よくわからんが呼び方が変わろうが真緒の素敵さは変わらないと思うので、言うことにしよう。
人を褒めることは良いことなので絶対言うぞ。言うぞ。
「さ、さて話を戻すと――三つ目が、キミの『人器強化型』だ」
指を二本立てる清明さん。「これは『武器強化型』と『人体強化型』の混合種だ」と語りながら、指を開いたりくっつけたりする。俺も真似してみる。なんか笑われた。
「『人器強化型』。それは武器だけでなく、使い手自身も強化される最優の型だよ。まぁ器用貧乏と言われることも多いけど」
「器用貧乏?」
「ああ。武器も身体も強化されるけど、どちらも『武器強化型』と『人体強化型』ほどではないんだ。実際、キミの刀は凄まじく硬度が上がるけどそれだけ。自動で動くとか炎や雷撃が出るとか、特殊攻撃が可能になるわけじゃない」
なるほど。それはそうだ。
「で、身体のほうは視力が強化されるようだけど、それだけなら強力というより便利って範囲だし、身体能力が伸びるわけじゃないだろう? そんな感じで、使い手自身の技量で優劣が決まるのが『人器強化型』なワケだ」
ほほほう……それなら俺にピッタリかもな。
俺が何より武器としているのは、清明さんに見いだされた『斬殺』の才だ。
刀を握れば頭さえ冴える。あの才を生かすのに、刃の硬質化と超視力は実に有用だ。
「それで清明さん、四つ目は?」
「ああ。最後は、『事象支配型』だね」
事象、支配型……? これまでの種別は名前から中身を想像できたが、それは一体?
「これは説明が難しくてね。発現者も少ないし、その能力も様々だ。まぁ共通していることといえば、“世界の法則を変えられる”ってとこかな」
「世界の、法則を……?」
それはまた意味の分からない話だ。まるで想像が出来ない。
「たとえば、林檎が地に落ちる法則を歪められたり、嘘を吐いた者の胃に本当に針千本が現れたり、
怖いよねー、そんなチカラ使えるヤツと清明さんはへらへら笑う。
「以上が巫装の種別だよ。次の『媒介』って項目はまぁ、ナニを素材として巫装を顕現できるかって感じだね」
ああ、色々握らされて「巫装展開」って言わされたな。色んな武器から、なぜかトランプという海外の遊び道具まで。あれが武器なわけないだろうに。
「シオンくんの場合は、キミが『斬れる』と認識した武器二つまでだったね。人によってはなんでも素材に出来たり、数の限りもなかったりするんだよ。それもまた強みの一つかもね」
「確かに、何でも使えて数も多いほうがいいな」
巫装展開前に媒介となる武器自体がなくなるって場合もあるかもだからな。俺も予備の剣くらい手に入れようかな。
「さて、後は
再び用紙を指差す清明さん。どれがなんと読むか指し示しながら語ってくれる。
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攻撃性:A 攻撃範囲:E 耐久性:A 消費霊力量:C 操作性:A
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「まずは巫装の攻撃性。コレは単純に、どれだけ硬い物質まで攻撃が通るかだね。技量込みの判断にもなるけど、キミの【
「おお」
頑張ってスパスパした甲斐があるな。嬉しい。
「次に巫装の攻撃範囲。これは、一撃でどこまでの距離や規模まで攻撃を与えれるかだね。キミの場合は刀だから、仕方ないけど手が届く範囲のE判定だ」
「斬撃で空気圧飛ばせるが?」
「あぁーーーーうん。それはもう完全に巫装の性能関係ないからノーカン。あえて無視して次三つ一気にいくよ」
あえて無視されてしまった。悲しい。
「まず耐久性。これは巫装の硬さだね。防御に使えるし、あと巫装が破壊されると一気に霊力を消耗するから、この数値が高いのはいいことだ。次に消費霊力は……これは前に説明したからカット。そしたら最後は、操作性だね」
「操作性……?」
使いやすさってことかな?
「具体的には、制御のしやすさだ。たとえば炎が噴ける剣があるとしたら、その炎の熱量や放射範囲を、どのくらいまで調節できるかで決まるって感じだ。シオンくんの場合は武器に特殊能力はないし、超視力も遠くのモノから小さなモノまで何でも自在に見えるようだから、A判定だね」
「おおー」
それは嬉しいなぁ。なるほどなるほど、自在に操れるとA判定なのか。
しかし、それを言うと……。
「……となると、蘆屋は?」
「あー、今のあの子はねぇ……」
そんな話をしていた時だ。道場の戸がズガシャッと蹴破られ、「ウオォォオイッ!」という謎の鳴き声が響いた。
そちらを見ると、包帯まみれの蘆屋の姿が。
あ、俺のことを睨みつけてきた。あと72万1350秒。
「ここに居やがったかクソボケ侍ッ! テメェに一言言いたくて病室を抜け出してきたぜッ!」
「いや抜け出しちゃ駄目では?」
「うるせぇッ! いいかァよく聞けよォッ!? 先日の任務じゃテメェにずいぶん活躍されたがなぁッ、オレ様が本調子になりゃお前なんてなぁーーーッ!」
ギャーギャー喚く蘆屋くん。失血死寸前だったらしいのにメチャクチャ元気だ。……あ、いや。まだ顔が青いし実は元気じゃないのかもしれない。
そんな彼に清明さんは溜め息を吐き、指を差して一言。
「操作性E。扱いずらさがクソみたいなのが蘆屋くんだ」
「なるほど、クソみたいなのが蘆屋なのか」
そう納得する俺たちに、蘆屋は「なんだテメェらーーーーッ!?」とひときわ大きく叫ぶのだった。
あ、倒れた。あと72万1320秒。
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