八色運動会⑹

木天蓼愛希

第1話ボロい教室とH組

 僕林新葉はやししんば小学三年生と僕の仲間グループジューフレンはH組の教室を探しに行った黒田樹くろだいつき君とH組担任の杉浦高弘すぎうらたかひろ先生の後をH組の生徒達と共に追って行った。学級表示板には三ーHと書いてある。扉を横に開き、生徒達も皆んな教室の中へと入って行った。中には本館である校舎に置いてあった見慣れた机と椅子が並べられていた。机の上には三角折りに立てられている名前の札が置いてあった。と、言う事はやはり、明日からはここで学ぶ事になるらしい。僕達三年生はまだしも新一年生である音葉達がこんなオンボロな牛小屋の様な校舎に古い使い古された机と椅子を使わせると思うと心が痛いと思うのだ。


「これはどう言う事だよ。綺麗事言うな」


 と、怒っていた樹君だったが、


「現実を受け入れろ」


 と、言われてしまいどうする事も出来ずにいた樹君。僕らH組の生徒達も何も出来ず、受け入れるしか無かった。


 

      ー翌る日ー


 僕達はここオンボロ屋敷と言われる教室に集まっていた。H組のクラスでは横に八席。縦に十席で全部で八十席になる。窓際から右に向かって男女交互に席は並べられていた。男子女子共に四十人ずついた。席はあいうえお順で岩瀬海咲いわせみさきは女子の中では十三番なので窓の席から四番目で前から三番目の席だった。藤島渚ふじしまなぎさは一番際の廊下側で後ろから二番目の席だった。立花陽奈たちばなひなは渚の列の前から五番目。女子では三十五番だ。


 渡辺駈わたなべかけるは四十番で男子では最後の席だった。渚の席の左後ろの位置にある。石毛大地いしげだいちは十一番で窓からは三番目の列の一番前の席だった。三人で集まっている林新葉はやししんばの席は三十四番で廊下側の隣の列で駈と同じ列だ。前から四番目だ。そこへ渚が来たのだ。そんな時の事だった。


「陽太。またお前、こんなチャラチャラするもん持って来て、何考えてんだ。カッコ付けてんじゃねーぞ」


 樹君がその子の髪の毛をぐしゃぐしゃにする。黒田樹二十三番。窓際から右に向かった列三番目で前から三番目の席だ。髪型はクールロックでガシッとした体付き。身長は高く、服装は黒で統一。襟やポケットなど赤でオシャレになっている。


「やめろよ。樹」


 手を払う男の子。須田陽太すだひなた二十八番。樹と同じ列で前から八番目の席だ。髪型はキュートボーイで、身長は大地君位だ。大地君同様でモテ顔ボーイ。


「やめなさいよ。樹。弱い者いじめする様な事」


 一人の少女が樹君を注意する。少女は高森紬たかもりつむぎと、言う子だ。三十三番。廊下側で前から三番目の席でストレートロングの髪型。身長は女の子としては高め。体格はスラっと見える。服装は紺の上下。見た目はカッコ良く見える。


「また、お前か邪魔しに来んなよ」


 突き離す樹君。


「大丈夫ですよ。紬さん。いつもの事ですから任せてください」


 須田陽太君は手慣れた様な扱いである。


「そうね。あなたが大丈夫って言うなら任せるわ」


 紬さんはそれを聞いて引っ込む事にする。


「何が大丈夫なんだよ。何がいつもの事何だよ。お前俺の事馬鹿にしてんじゃねー」


 樹君が今にも殴り掛かりそうな格好をしている。


「殴りたいならどうぞ!」


 あくまでも冷静な沈着な陽太の対応に益々苛立つ樹の顔は赤く染まっている。


「殴らないんならあっちに行ってくれよ」


 犬や猫でも追い出すかの様にしっしって手で合図をしている。


「あうあわわああうぅ」


 樹君は悔しがり、歯痒がり、言葉にならない声を発している。女子達は樹君の顔を見ている。その結果、悔しがりながら、引っ込んだのだ。これはもしかすると、女子人気な陽太君じゃないと出来ない芸当なのかもしれない。他の男の子ならそうはならないのではないのかと不安にもなった。


 次の日は新学期の一斉テストがあった。


「あー終わったー」


 言ったクラスメートの声が流れて来た。そんな中、僕達もテストの結果が気になっていた。僕達旧学五人で話していた。


「ねぇ。今日のテスト難しかったよね。習って無い所が出たでしょう」海咲が大地に聞いている。


「ああっ。僕達が学校に行けなくて習えなかった所が出たんだなー」


 大地は答えた。


「そうなの。塾に通っていた二人が習って無いから難しいって言うんだものね。私達が難しいって感じるのも無理無いんだよね」


 渚が言って納得する。


「僕も全然分かんなかった」


 新葉も言う。


「あんた達も難しかったのよね。私もだけど皆んなが難しかったんならしょうがないじゃ無い」


 立花陽奈がやって来て話に加わって来た。


「そっか皆んなが難しかったって事は皆んなが出来なかったって事でもあるから気を取り直して行こう」


 松浦陽菜まつうらひなが言った。


「そうだよね。陽菜ちゃんの言う通りだと思うわ。渚ちゃんそんなに心配しなくても良いと思うの。私も難しかった物」


 藤浦心春ふじうらこはるが気を使ったのかそんな風に話した。


「うん。そうだね」


 言って渚は皆んなの優しさに少し安堵した。


「私は藤浦心春ふじうらこはるよ。よろしくね!」


 心春と名乗る女の子が自己紹介した。ミディアムボブで小柄な女の子だ。服装はワンピースで水色だ。僕達三人も自己紹介を改めてした。それがきっかけで僕達は彼女達と良く話をする様になった。


「陽太。また、お前こんなチャラチャラするもん持って来て何考えてんだ。カッコ付けてんじゃねーぞ」


 言って、男の子がその子の髪の毛をぐしゃぐしゃにする。


「やめろよ。樹」


「やめなさいよ。樹。何度言ったら、分かるの⁈」


「それはこっちのセリフだ。何度も邪魔すんな!」


 樹君は粋っている。女の子の前に歩み寄り、今にも殴りそうな勢いで紬さんに詰め寄る。それを見ていた渚ちゃんは新葉に言った。


「新葉君。あれ見て、女の子が困ってるわよ。止めて来て」


 渚ちゃんは注意を仰ぐ。潤んだ瞳に訴え掛ける可愛らしい唇。拒否は出来ない。しかし、相手は樹君。関わりたく無い人物だ。乱暴者だ。殴られたらどうしよう。怖い。怖すぎる。


「えっ。僕。いやいやいや嫌。そう言う事はさー。本当に向いて無いんだよ」


  手を振り新葉は断り、固まっている。


「新葉君。 早葉君は色々解決してくれたでしょう。新葉君は弟なんだから 早葉君みたいに解決して!」


 渚ちゃんは頼んだ。


「あのねー。お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだよ。僕とは違うんだ。僕には無理だよ」


 新葉は無理だと言う事を主張した。


「何よ。新葉君は女の子が困っていても良いの。平気なの。男の子でしょう。もう知らない」


 言って、プイッと怒ってしまった。


「えー」


 一言。言うと新葉は渋々二人の元へと行った。新葉は樹君の側まで行くと、樹が新葉を睨み付ける。新葉はそれだけで身が縮む思いだ。


「何だよね見せもんじゃねーぞ。文句でもあんのか?」


 樹が強い口調で新葉に言った。


「あのですね。女の子には優しくした方が良いんじゃ無いかと………………」


 新葉はビクビクしながらも樹に声を掛けて見た。


「うっせんだよー」


 言われて新葉は後ろに突き飛ばされる。


「やめなさいよー‼︎」


 言って、紬は樹を蹴り飛ばす。樹が吹き飛ばされる。


「何すんだよ」


 言って樹君は紬さんの服を引っ張る。それを見た新葉はそれを止めようと………………。


「ダメだ。やめて」


「ドカッ」


 止めようとした新葉に殴り掛かる樹。それを新葉が手のひらで止める。


(コイツ俺の拳を手のひらで止めたのか。まぐれか?)この時、樹君はそんな事を考えていた事を僕は知らずにいた。


「イタタタタタタタタタタ」


 何故なら、僕に樹君の拳を貰った僕は手が痛くて痛くて、そんどころではなかったからだ。もうこのクラスでやって行けるのだろうかとか、渚ちゃんは僕に何を求めているのか分からなくなった僕はクラスの友達作りは音を立てて崩れて行く気がした。

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