三者面談

@mark-r

三者面談

ガラガラ


小さくドアが開き、入って来たのは見慣れた親子。


「こんにちは、どうぞおかけください」


声を掛けると少年は緊張したように椅子に座る。


「…」


「先生、本日はよろしくお願いします。」


無言の少年に変わって、母親が挨拶をする。


「今日はどうしたのかな?」


「あの…えっと…」


少年と目を合わせて会話をしようとするが、目をそらされてしまう。


相も変わらず少年は自己表現を伝えることが苦手なようだ。


暫くして、


「あのですね…」


少年の様子を見かねてか、母親が代わりに口を開く。


「この子、毎日顔を腫らして…泣きながら帰ってくるんです。わたし、この子が可哀そうで可哀そうで…このままだと学校に行くのも嫌になってしまうような気がして…」


大体言いたいことは分かった。それと同時に顔を見ていながら、彼の辛さに気づけなかった自分自身がだんだん不甲斐なくなってくる。


「普段から気を配ってみていたのですが、気づけなくてすみません。」


母親に謝罪をした後、少年にも続けて言った。


「ごめんね。気づけたらいいなとは思うんだけど、私も人の心が読めるわけじゃない。辛かったり、悲しかったりしたことがあったら遠慮なく言ってくれていいんだよ?」


とは言っても、この少年にそれは難しいのかもしれないが…


俯いたままで何も話そうとしない少年が心配なようで、母親はさらに続けた。


「最近は外に出るのも億劫になっているようなんです」


「なるほど…」


母親の話を聞いて、思っているよりも深刻になっているかもしれないと感じた。


「何か話してくれるかい?」


「…」


問いかけてはみたものの返答は返ってこない。これは身体的な問題ではなく、精神的な負担の方が大きくなっているかもしれない。そこで私は、過去の体験談を話してみることにした。


「私はもともと、小学生の時君と同じ環境にいたんだ。外には出たくないし、かといって家の中にいるから落ち着くわけでもないし、何処に行っても何をしてもつらかった。周りとは、話し方も何もかも変わるし全てが不公平に思えた。」


少年を見ると同情しているような、何かを考えているようなどのようにでも取れる顔をしていた。更に私は続けた。


「でも必死にそれと戦って、打ち勝って高校生になるころには環境も変わって無縁の存在になっていた。」


「…!」


その言葉を聞いたとき、少年の眼に光が宿ったように感じた。


「君もきっと私と同じように立ち直ることが出来ると思うんだ。立ち直るための手伝いを私にさせてくれないかな?」


「僕も…、僕も先生みたいになれる?何も気にしなくていい人生を送れるようになれる?」


「なれるさ、たださっきも言ったけど、俺は超能力者ではないから辛かったり悲しかったりすることがあったら言って欲しい。何かできることが無いか考えるから。一緒に頑張っていこう」


「うん!僕頑張る!」


少年の言葉に思わず顔がほころび…そして母親の方を向いて言う。








「では前よりも少し強い花粉症のお薬出しておきますね」

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