第6話 仲良くなるには
「涼夏とまた仲良くなりてえなあ」
俺の呟きに、知己と智は憐れみのこもった視線をこちらに投げかける。
「随分と慎ましい願いに変わったな」
「まあ、身の丈に合ってていいんじゃない?」
「失礼なやつらだな」
何か言い返したいと思ったが、まあ事実であった。
もともと自分自身が好かれていると確信していたところから、仲良くなりたいと思うだけに見事にランクダウンしてしまった。だがそうするしか今の俺に道はないのだ。
「何とか仲良くなれねえかな?」
「うーん……」
「ちょっと厳しくないか?」
「なんでだよ」
俺の言葉に、渋い表情で顔を見合わせる二人。少し気まずそうだ。
「彰さあ、理想のヒロイン? 探すために校内中の女の子と喋りまくったんでしょ?」
「うん」
「それってさあ、他の人からすればどう見える?」
「他の人から?」
他の人から……え、どういうことだ? もしかして、なんかダメなことだったのか?
また俺なんかやっちゃいました? って感じだろうか。いや、今回は本当にやっちゃってるっぽいが。
全く理解できない俺を憐れむように、智がぽんと俺の肩を叩いた。
「ちょっと想像してみてくれ。俺が女子にこっぴどくフラれたとしよう」
脳内で智がフラれている姿を描いてみる。ビンタされてることにしよう。はは、ウケるわ。
「そんで、フラれた次の日から俺が違う女子、それも大勢に話しかけまくってたらどう思う?」
「節操なさすぎやろと思う」
「そういうこと」
「…………あぁ」
「特に彰は悪い意味で有名だからね……そういう噂はすぐ広まると思うよ」
なるほど、そういうことか。今理解できた。
周りからすれば、フラれて脈がないと理解した瞬間に涼夏のことをすっぱり諦めて校内中の女生徒にアタックし始めたヤバいやつに見えていたのか。
……あれ、それってやばくない?
「涼夏からすればめっちゃ印象悪くない?」
「うん」
「確実にな」
「…………詰んでね?」
「まあね」
空を仰ぐ。俺の心模様のようにどんよりとしている梅雨の空だった。
次第にぽつぽつと雨が降り始めた。ピロティの下に移動した俺たちは、校庭を眺めながら雨の匂いを嗅いでい た。
「好かれるのもきついかぁ……」
「今のところ好感度はマイナスだろうからね。まずはゼロのところまで戻さなきゃいけないんだよ」
「どうやってゼロに直せばいいと思う?」
静寂。雨が地面を打つ音だけがピロティの下に響いていた。
「正直、時間に解決してもらうしかないと思うわ」
「まあそうだよね~」
「それ以外に手はない?」
「ツンデレ好きをどうにかすればワンチャンあるかも。それは?」
「それはできない」
「なら、もう他に手はないよ。厳しいかもしれないけど、今は彰の存在そのものが好かれてないんでしょ? なら彰が何したって無駄だと思うし、むしろ逆効果で嫌がられるだけだと思う。彰が今の彰のままだったら、好かれることはないと思うよ」
心がずんと重くなる。時間に解決してもらうしかない、か。俺と涼夏の間には、いつの間にかそれくらいの距離が開いてしまっていたらしい。
「きっついなあ……」
「まあとにかく、彰が今すべきことはたった一つしかないよ」
「え、なんかある?」
「うん」
弁当を片付けながら、知己はなんてことないような口調で言った。
「中間テストの勉強」
まあその通りだよね。
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