第11話 優しい雨

雨が降る


早朝から降り始めた雨が

この小さな町を洗う


山裾は白い霧を湛え

空は雲に覆われているにも関わらず

見えない太陽が明るく照らす世界


怠惰な夏を思い出せば

燃えるように芽生えた夢を

静かに消し去る秋が来る


暖かい春が来れば

きっと何かが始まるだろうと

心に灯す光は未だ消えず


暖かな胸の火に

気持ち良いほどの冷たい雨が降る


消すことのできないこの思いは

優しい冷雨に濡れている

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