沈んだ世界にたった二人で

自転

第1話

ザザーン...ザザーン...


傾いたビルの上に座り、沈んだ街を眺める。

水平線に至るまでには恐ろしいほどの崩れたビル群と、

未だ動き続ける人工知能の搭載された巨大な殺人兵器が何体も見える。

あの兵器に人間は何万人殺された事だろうか。


「あの頃から変わらないのは海だけだね。」


「そうデスね。レイサマあと32分で日が落ちマス。ご帰宅の準備ヲ。」


「えー、もうそんな時間かぁ」


落ちゆく夕日を背に崩れ錆びれた街へと帰る。


「はーぁ。人がいなくなってから世界ってつまらないね」


「そうデスね。」


「ほんとうにわかってる??」


「ハイ」


私の唯一の話し相手はロボットとの戦争が起きる前から世話焼きロボットとして

家に置いていたCAREだけだ。

この子だけはロボットが反乱を起こした時も何一つ変わらなかった。

おじいちゃんがエンジニアで、この子のメンテナンスをしていた事が

関係しているのかな?


-----------------------------------------------------------------------------------------------


ギ...ギギギ...ガシャン!!


「ふ〜」


ようやく我が家に着いた。

私の家はおじいちゃんの使っていたラボを再利用したものだ。

家は地下にあってロボットにもバレにくく、発電機も置いてあるから

CAREの充電もできる。


本当は上にあった元の家に戻りたいんだけど、目からレーザーを出す

ロボットに焼き尽くされてしまった。

家族もそのロボットに焼き殺されてしまった。

おじいちゃんが私をラボに隠してくれて、でも上から今まで聞いたことのない

断末魔が聞こえて。


真っ黒こげになった家族を一人一人埋めたときは、辛いというかもう

何も感じなかった。

ただ埋めてあげなきゃという一心で一人一人丁寧に埋めた。

毎晩その時のことを夢に見る。

悪夢に慣れることはいつまで経ってもないと思う。


-----------------------------------------------------------------------------------------------

少しゆっくりしているとお腹が空いてきた。

CAREにご飯をとってと頼むといつものレーションを持ってきてくれた。


「今日も味のしないレーションを食べようかけーちゃん」


「私ハ電気で動きますノデレーションは結構デス。」


「もうそれ、聞き飽きたよ」


「スミマセン」


「そこまでね...」


お腹がいっぱいになると眠くなるのが人間だ。

今日も硬いソファーの上に、黄ばんだ毛布をかけて眠りにつく。


「明日は、街の方に出て食料を集めようか」


「カシコマリマシタ」


青白い電気に包まれながら私は眠りについた。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る