13.お疲れさま
「おつー。おふたりさん、今日はどうだったー? ユウタ、初仕事はうまくいったー?」
あいかわらず緊張感ゼロのトレグラスⅡ世だった。
「教官……」
祐太は返答につまった。予想外の出来事ばかりで、何から報告すればいいのか、頭の中で考えがまとまらない。
「どうだったー、じゃありませんよ。トレグラ」
ルシルが恨めしそうに顔を上げて、
「いくらなんでもスライムが多すぎです! 異常です!」
「えー? 異常って……そんなにぃ?」
「駆除してくださいと、前にも頼んだはずですっ!」
ルシルは噛みつかんばかりに、教官にせまった。
「おっかしいなぁ……。先週、討伐隊に駆除をたのんだばかりなんだけどなー」
「前より増えてます! それに、今回もギミックは動きませんでした! メンテナンスはどうなってるんですかっ! もう!」
ぷんすかぷんすか頭から怒りを沸き立たせるルシル。そういえば、オペレーションルームにヤカンを置きっぱなしだったのを祐太は思い出した。
「ギミックもー? あっれれー? それはまた、おかしいなー? ふーん……? まぁ、保守部隊には伝えとくよー。とりあえず、二人とも今日はご苦労さまー! この調子で明日からもガンバってよー! じゃ、おっつかれさまぁー!」
「待つのです」
ルシルの手が飛び去ろうとした教官のシッポをつかんだ。
「ちょっ、シッポをつかまないでー!」
「逃がしませんよ、トレグラ。話を終わらせようたってそうはいきません。今日という今日はみっちり話をさせてもらいます」
「う、うーん。……ま、まぁ、あとで、詳しい報告をきかせてよー」
「あとではダメです。これで何回目だと思ってるんですか」
教官の目が泳いでいる。
「いやー……だから、本部にもいろいろ事情があってさー。人手とかぁー? 費用とかぁー?」
「結構。言いたいことがあれば全部聞きましょう。わたしからも全部言わせてもらいます。ご心配なく、です。時間ならたっぷりあります! ……あ、ユータは先に帰ってもらってかまいません。今日はどうもありがとうございました。おつかれさまでした」
「えっ? あ、うん。ありがとう。おつかれさまでした」
祐太は笑顔のルシルとおびえる教官に手を振ってその場を後にした。
残業する元気は残っていなかった。
祐太は更衣室で泥だらけのローブを脱いだ。しもべスライムにとびつかれたところがシミになっている。
自分の
「なんか……つかれた……」
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