第13話 マズい【モモ視点】

【モモ視点】


「……マズいですわね」


 子を孕んでから早半年。

 そろそろ周りを騙せないほどに、お腹が大きくなってきましたわ。


「何とかして、バレないようにしなければ……」


 ヴィルディ様を騙すことは、容易いことですわ。

 あの人はアホなので、適当に太ったとでも言っておけばいいのです。

 

「でも……第一王子や陛下は違いますわ……」


 彼らは鋭いです。

 私がどれだけウソを吐いても、見透かしてくるでしょうね。


「……こんな風になるんだったら、あの時貧民街に行かなければよかったですわ……!」


 始めは、ただの暇つぶしでした。

 お姉様ばかりが婚約者として、チヤホヤされる姿に嫉妬してしまい、孤独とモヤモヤを癒やすために貧民街に向かったんです。


 そして、淫らな行為やクスリなど……色んなことを学びましたわ。

 最初は怖かったですけれど、だんだんと仲間達の優しさや情に触れていきました。

 貧民街の人たちは底辺ですけれど、それでも優しくて面白い人たちです。


 ですけれど、そんな生活をしていたある日、私の身に異変が起きたのです。

 朝からヤケに気持ち悪くなって、病院へ向かいました。

 その時です。私が妊娠していることに気づいたのは。


「あの貧民街での日々は楽しかったですけれど、今こんなに苦労するのでしたら……あんな楽しみは知りたくなかったですわ!!」


 そうです、これは私が悪いのではありませんわ。

 私を悪い遊びに誘った、あの底辺共が悪いんですわ。

 私が夜の貧民街を歩いているときに、声を掛けてきた底辺共が悪いんですわ!!


「私は何も悪くありませんわ!!」


 ですけれど、陛下や第一王子はそうは思わないかも知れません。

 私は何も悪くないですけれど、対策を練る必要はありますわ。


「あんな貧民共みたいになりたくないですからね。私のような高貴な公爵令嬢は、王家の一員になるのがふさわしいのですわ」


 ですけれど、一体どうすれば良いのか。

 ああ!! もう少し勉強をしていればよかったですわ!!


「……あ、そうですわ!! お姉様を頼りましょう!」


 お姉様は顔は残念ですけれど、頭は良いですわ。

 普段はクソの役にもたたないお姉様ですので、こういったときくらい役立ってもらわないと。


「お姉様なんかに頼るのは癪ですけれど、仕方ありませんものね」


 これまで、お姉様を頼ったことなんて一度もありませんわ。

 私よりも頭脳以外の全てが劣るお姉様を頼るなんて、あり得ないですもの。


 ですけれど、今回は別ですわね。

 私の婚約者生活がかかっているんですわ。

 お姉様にも、多少は役立ってもらわないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る