第9話 役立たずの真骨頂

新メンバーが死んだり、抜けたり、加入したりで1っか月がたった


バーニーとミラ、ハーフエルフのミスリアがレベル3にあがり、新メンバーの戦士ワトソン、モンクのメイ、射手のロックが今のメンバーだ


射手が仲間になった事により、自分の弓の練度と本物の違いをまじまじと見せつけられている


新メンバーは全員レベル2に上がっている事により、今日はB2階へと挑戦するくだりとなった


僕はあまり上達しない弓に、使えない魔法、護身用の短いナイフ。ほぼ戦力でなく持ち物係となっている。レベルも戦いもせずに、ミラのように回復もしていない為に一人レベルが2のままだ


それでもこのPTを追われないのは、ミラとバーニーのおかげだ。ミスリアとロックからは影でお荷物扱いされている


「前回俺たちは、大トゲ亀にいいようにされてPTはほぼ全壊した。もしも一人でも欠けそうになったら早急に撤退するからな」


バーニーは以前の事を思い出し、レベルが上がった今も安全重視の考え方をしていた為に全員がレベル2以上にならない限りはB2階へ進もうとはしなかった


みながそれに賛同し、約1っか月ぶりとなるB2階へと挑戦になる


また長い階段をコツコツと降りていくが、嫌な記憶がよみがえる


隣にいるミラをみると、少し険しいような怖い顔をしていた


「ミラ、喉渇いてます?」


「えっえぇありがとう」


僕だけではない緊張感がPTを襲っているのは分かっていた


B2階へ降り立つとそのまま奥へと進んでいく


「くるぞ」


奥へと進むこと20分、ワーラットの群れと遭遇。小人の背丈に顔はネズミに手には武器をもったやつらが5匹だ


「落ちろ!」


ミスリアがレベル3になったことで新たな呪文が魔力と融合したようで、新しい魔法を覚えていた


催眠の魔法が敵全員を襲い、5匹のうち2匹が倒れた


僕よりも早く狙いを定めていた、射手のロックがワーラット1体の肩に矢が刺さる


それに負けないように、僕も狙いを定めて矢を放とうとするが・・・その横からロックがまた矢を続けざまに放ちワーラットの右目を捉えた


くそっ・・・


焦りからか狙いが定まらず、中々撃つことが出来ない


そんな状況で何とか動きが止まったワーラットへと1本放つことが出来たタイミングで、前衛が倒し切りB2階での初めての戦闘が終わった


前衛は息切れを起こしているが、思ったよりもバーニーは余裕そうだ


いつも通り、水を渡ししばしの休息になる為に後処理をする


矢とGを回収していると


「せんぱーい、俺の射線の邪魔はやめてもらっていっすか?」


射手のロックが同じように矢を拾いに来ると同時に、小言を言われる


「・・・すいません」


「俺が5本放つ間に1本しか撃てないなら、後ろに引っ込んどいてくれないっすか」


「・・・わかりました」


悔しいが何も言い返せない。それにロックが放った矢はただ当てるというだけでなく、急所を狙っているのが矢が刺さった場所からも分かる


僕のようにただ当てる事に必死な偽物と、本物の射手の違いがはっきりと出ていた


ミラも新しく覚えた、PT全員を回復する奇跡を唱え終えた


どこも怪我をしていない僕だが、僕にも効果が出て体から活力がみなぎる


ワーラットから200G近くを拾い集め、みなの場所に戻る


「お前ら魔法のスロットはどうだ?」


バーニーが現状を把握している


「私はファイアボルトが3回よ」


「私はレベル1が2回、レベル2が1回ね」


ミスリアとミラの状況を把握し


「俺は残り矢が10本す」


射手の弾数も報告に上がると


「・・・後もう一度戦闘できそうだな。いけるか、メイ、ワトソン」


「あぁ」


「うちも大丈夫」


バーニーは状況を把握し終わると


「ノエル、戻りながら探索するぞ」


「分かりました」


斥候がいない状況な為、マッピングは僕の仕事となっている。


走り書きのメモを頼りに、バーニーを誘導しB1階の階段を目指しながら脇道に寄ったりしながら魔物を探す


「・・・でたぞ大トゲ亀」


そいつはまた僕らの前に現れた。以前、ほぼダメージを負わせることが出来ず退却した相手だ


「ファイアボルト!」


ミスリアの先制攻撃から始まるのはいつもの事だ


火の礫が、大トゲ亀の顔を覆うと明らかにダメージが入っていそうな声を上げる


「キシャー!」


「おっいけるぞ!行くぞ!俺たちが気を引いている間にミスリアが倒せ!」


ミスリアの魔法が相性がいいのか威力が高いのか、恐らく両方だろうが大トゲ亀に有効のようだ


僕はロックと場所が被らない用に、少し離れ狙いを定める


ロックはその間に矢を放ち、大トゲ亀の甲羅や棘に阻まれていない箇所を狙い撃っていく


僕も狙うとすれば、やつの顔付近だ・・・だけど、前衛もそのあたりを狙っている為に僕にはフレンドリーファイアを避けて撃つ事は出来ない


だがロックは味方の隙間を縫う様に、矢を放ち大トゲ亀の急所を狙っていく


「ファイアボルト!残り1っ回よ!」


ミスリアの魔法の回数が残り一回となる


「俺も矢使い終わったっす!」


僕が1発も撃てない間に、ロックは10本の矢を放ちおわっていた


ミスリアの最後の魔法を放ち終わると、その魔法が当たった瞬間のよろめいた一瞬をバーニーは狙い


大トゲ亀の首を落としたのだ


「・・・やった」


大トゲ亀は首を落とされ、少しウロウロとした後にドシンと地面に四つん這いのまま伏せた


前衛3人はその場に倒れこんだが、すぐにミラが回復の詠唱を始める


散らばったゴールドはかき集めると、300Gもある。1体でこんなに落とす魔物は初めてだった


7人で分けても一人42Gにもなる。それにワーラットでも200Gを手に入れれていた為に本日の稼ぎは一人当たり70Gもある・・・B1とは違い金銭面でも旨味があるな


そんな思いをしながらGを集めていると


「はぁー、俺たちが戦ったのに先輩もそのお金もらうっすよねー」


「・・・」


「なんでバーニーさんやミラさんは先輩を一緒のPTにおいてるんすかね~」


「・・・」


ロックが矢の回収をしながらまた嫌味を呟く


「あー、3本駄目になってるっすよ矢。先輩の矢は無事っすか?あっ1本も撃ってなかったでしたっけ?」


ロックの言葉に何も返せない為に、僕はミラたちの場所に戻る


PTとしての成果は出たが、僕は何一つ成し遂げる事がなく僕らPTはダンジョンを後にした

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