第6話 生きて帰れた喜び
僧侶に連れられながら、日ごろ歩かない道を通り1軒の平屋にたどり着く
「ここよ、どうぞ」
「えっお邪魔します」
ひょんな事になったなと思いながら、女性の家に入ることすら初めての為今更ながらに緊張してきたが
前をいく僧侶がそのまま家に入っていくために、ついてはいることに
「ここは買ったんですか?」
「ううん違うわ、教会が管理している家よ。教会従事者には無料で提供されているのよ」
さすが蘇生で10000Gをとるほどの教会だ、それなりに組織全体が裕福なのだと伺える
小さいながらも、古びた様子はなく綺麗なつくりだ。僕がとまっている4畳の部屋とは大違いだ
リビングと寝室と風呂場とトイレだけの部屋のようだが十分すぎる作りに、自分も僧侶になれたらなと思うが僧侶になれるものは信仰心のあるものだけのような為、小さい頃からそれなりに教育を受けている者しかなれないようだ
部屋を見渡していると
「どこでも楽に座って、すぐに夕食を作るから」
「あっ手伝いますよ」
「いいのよ、私料理好きだから座ってて」
僧侶にそう言われ、席に座るが落ち着かない
他人とプライベートで同じ空間にいること自体が落ち着かないというのに、そこにここは相手の空間だ
椅子に座るも、自分がダンジョン帰りで汚れている事をきにして深くもすわれず、どうしていいか分からず息をひそめ目をつぶりじっとまっているといい匂いが立ち込め始めた
石になること1時間はたっていたようだ
テーブルに鍋がおかれ、パンと水が並べられる
「うわぁ美味しそう!」
いつも節約の為にりんごしかかじっていなかった為に、シチューなんてものはご馳走に見える
「おおげさね、普通のシチューよ」
「ご馳走ですよ!食べていいんですか!?」
「どうぞ召し上がって」
鍋から器にシチューをよそって貰い、パンをきりわけると食事になる
「いただきます!」
特段戦闘はしてない僕でもダンジョン内を歩くだけで体力は消耗する
パクパクとシチューをすすり、パンをひたして水で流し込む
こんなに美味しい食事は久しぶりだ
「見た目のわりに勢いよくたべるのね」
「えっこんな食事久しぶりだったので、ミラとても美味しいですモグモグ」
「そう、よかったわ」
ミラは嬉しそうに微笑みならがそういう
久しぶりにお腹いっぱいの食事が出来、最初遠慮していた事を忘れるぐらいがっついて食べた
「ふー・・・お腹いっぱいです。ミラありがとうございます」
「私もこんなに食べてくれて嬉しいわ」
そこから何となくお互いの事を喋り始めた
PTと言っても結局すぐに死んでしまうために、深く付き合うつもりがないために名前と職業しか知らない仲だった
僧侶も同じように考えているのか、周りとは一線を引いて接している様に思えた
それでも今回は死地を潜り抜けた仲のおかげか二人とも、身の上話をした
僧侶の教会は、衣住食をすべて無料で提供されるようなのだが、途中でダンジョン攻略を抜け出すことは出来ず、離反すると違約金を支払う必要があるらしい
蘇生の奇跡を覚えるまでは、ダンジョンにもぐり続けレベルを上げなければならないようだった
途中で投げ出すことができないという縛り以外は、やはり僧侶は他の職業よりも優遇されているように思える
僕も村を追われて、この街に流れ着いた16歳だと伝える。お互いの歳も知らなかったが僧侶は19歳と僕よりも少し年上だった
「私お風呂に行くわね」
しばらく食後にゆっくりとしていたが、お互いダンジョン帰りなため疲れもある
「あっじゃあ僕もそろそろ帰りますよ、ごちそうさまでした」
「え?帰るの?泊まっていきなさいよ。まだ心細いのよ、それに・・・ほら約束も」
「約束?あぁダンジョンでそんな事もありましたね・・・」
一晩を共にするなんてあの場を切り抜けるための、なんてことのない言葉だったが僧侶は守ろうとして僕を家に呼んでくれたのか
そんな事を思っていると、僧侶はリビングから姿をけしてお風呂場へと歩いて行った
「えっ・・・どうしよう」
緊張が食事で解けていたのに、また緊張してきてしまった
頭が真っ白になっている間に、僧侶はお風呂場から湯気を出しながら出てくると
「ノエルも入っていらっしゃい」
「え?でも着替えが」
「大丈夫よ、男性用の平服がタンスに入っていたから」
そういわれ、背中をおされ風呂場に
風呂に入るのも何日ぶりだろうか・・・宿屋では井戸の水で体を流すだけな為に温かいお湯に浸かるなんてなかった
渋っていたが、浴槽にたまったお湯をみると体は服を脱いでいた
ゆっくりと体を浸すと、そのぬくもりが体を包みこむ
「はぁーーーー・・・」
心の奥底から漏れる声
村では公衆浴場よくいっていたなと、思い返す
不意に村の事を思い出すと、いつも少し涙がこぼれそうになる
そのまま寝てしまいそうな居心地に、後ろ髪をひかれながら浴槽をでて言われた場所に置かれた服を着てみるが少しサイズが大きくズボンの裾を3回ほど折り返す
風呂場を出ると、僧侶は椅子に座ったままの状態で寝ている様子がみてとれた
「お風呂いただきま・・・ミラ?」
スースーと心地よさそうに一定のリズムで体を上下させている為、起こすことを躊躇われてしまう
「どうしよう・・・」
このまま帰るにも、鍵をかけることが出来無いしと途方に暮れる
それでもミラを抱き上げると、寝室へと連れて行きベッドへ寝かせる
「ふー・・・まぁ屋根があるから床で寝れるか」
ベッドの下に腰掛けると、僕は今日一日の出来事を思い出し、恐怖がやっと体を包む
ダンジョンでは淡々と冷静にと思って行動するが、誰よりも臆病だ
いつ自分が死んでいてもおかしくない状況だった為に、僕はミラの寝息にかきけされるぐらいの小さな声で一人涙を流した
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