この世界は恐らく高校生ハーレム物の作品の世界なんだが、モブの俺は隣の眼鏡女子が眼鏡を外してハーレムに参加するんじゃないかとビクビクしている
タヌキング
内心ヒヤヒヤ
やぁ、俺の名前は鈴木。下の名前はしょうもないので言う必要ない。
俺は知っている。この世界が高校生ハーレム物の作品の世界だということを。
だって俺のクラスに天王寺 勝(てんのうじ まさる)という女子にラッキースケベを誘発させる体質のとんでもない男が居るんだが、その男が二学期からモテ始め、巨乳の幼なじみ、巨乳の令嬢、巨乳の担任、貧乳の女性型のアンドロイド、爆乳の宇宙人などとドタバタラブコメをやっているからである。
「勝ーーーー‼アンタまた女の子の胸触ったでしょう‼」
「不可抗力だってーの‼」
今だって昼休みに天王寺はたわいのないことで巨乳幼なじみと追いかけっこをしている。多分この作品におけるモブである俺はその様子を一番後ろの自分の席から冷ややかな目で見ていた。
毎日よく飽きないよな。まぁ作品の展開上は仕方のない事なのかもしれないが、こうも毎日毎日騒がれると流石にウンザリである。
「今日も騒がしいですね。」
俺の隣の席の田村 由香里子が微笑を浮かべながら俺に声を掛けて来た。突然話し掛けられるとドキッとしてしまう。
「あ、あぁ、うるさくてかなわんよ。」
出来る限り平静を装ってみたが、心臓のバクバクが止まらない。というのも実は俺は由香里子に惹かれており、先日ダメ元で遊園地デートに由香里子を誘ってみたら何とOKを貰えたのである。
好きな女子からデートの誘いを受けてもらえた時の嬉しさは破格の物であり、テンションが上がりに上がって、俺は由香里子の顔を見る度にドキドキが止まらないのである。
しかし、ココである懸念が俺にはあった。
由香里子が天王寺ハーレムに参加するんじゃないかという懸念である。
というのも由香里子は眼鏡をしていて地味な女子なんだが、とても顔は整っているし胸は巨乳でスタイルの良いのである。ということは実は眼鏡を外すと美人だった枠で由香里子が天王寺ハーレムに入る可能性があるわけである。
考え過ぎだと言う人も居るかもしれないが、これだけ由香里子が美人なのに周りの男共が彼女に見向きもしないことが俺は不思議で仕方なかった。ハッキリ言うが眼鏡をかけている女子は眼鏡を外さなくても美人だ。スーパーマンの眼鏡じゃないんだから眼鏡を外しただけで他人から見える顔が変わるなんてこと無い。
ゆえに周りの人たちが眼鏡女子が美人に気付かないということは、この先の展開上で眼鏡女子が美人だと気付いてしまうと都合の悪いことがあるということである。
そうなるともう由香里子が天王寺ハーレムに加入するという俺的に最悪の展開になってしまう可能性がある。それだけは何が何でも阻止したいのだが、いかんせんモブである俺がいくら駄目だと騒いだところで何の影響力も無いだろう。それにハーレムに入る入らないのは本人の自由であるし、たかがデートをOKしてもらっただけの男がどの面下げてシャシャリ出て行けるのだろう?
・・・由香里子が天王寺ハーレムの軍門に下ることを考えたら夜も眠れない。それが俺の目下一番の悩みである。
「うわうわ‼押すなって‼うわーーーーーー‼」
「えっ?」
俺が考え事をしている内にまさかの展開、天王寺の奴がハーレムの女共に押されて由香里子のところに倒れ掛かって来たのである。
あまりに突然のことに俺も由香里子を庇うことは出来ない。
「きゃああああああああああああああ‼」
“ドターン‼”
由香里子の悲鳴と共に机やら椅子やら巻き込んで倒れ込む二人。この展開はヤバイ。
「イタタタタ、ごめんね・・・ん?右手にムニュッとした柔らかい感触が?」
隣で騒動を見ていた俺は開いた口が塞がらなかった。倒れた拍子に天王寺の奴は由香里子に馬乗りになり、天王寺の右手が由香子の左胸を掴んでいたのである。
自然に殺意も沸々と湧いて来て、自分の椅子で天王寺の頭をかち割ってやろうかとも思ったが、寸前の所で理性が働いて何とか我慢した。
「ご、ごめーん‼」
謝りながらも右手をどけない天王寺。悪気はないのだろうが悪い右手は切断されても文句はねぇよな?
「い、良いですから、早く退いて下さい。手も胸から放して貰えますか?」
「あっ、そうだね、あははは。」
ようやく由香里子から退いた天王寺だが何を笑っている?そんなに女子にラッキースケベをして嬉しいのか?二度と笑えなくしてやろうか?
「あれ?君ってさ・・・」
おっと、ようやく離れたというのに由香里子の顔に右手を伸ばそうとする天王寺。これは不味い展開である。この男、ここから由香里子の眼鏡を外して「眼鏡無い方が綺麗だよ?」とかベタな台詞を吐くつもりではあるまいか?おいおい、ふざけるんじゃねぇ、それだけはやめろ。
天王寺の右手が眼鏡に触れるまであと数センチ、俺は慌てて止めに入ろうとしたが、絶対に間に合わない。
が、結果として俺が慌てる必要無かった。
“ガッ”
由香里子が素早く天王寺の右手を自分の右手で掴み。
“ギリギリ”
そのまま捻り上げたのである。
「痛い‼」
苦痛に顔を歪める天王寺。これは見ていて痛快だった。
「あのすいません、私の眼鏡に二度と触れようとしないで下さい。指紋が付くんで。」
眉間にシワを寄せて怒る由香里子。普段から温厚で優しいだけに起こると非常に怖い。
「わ、分かりました‼すいませーん‼」
天王寺が謝ると由香里子はパッと右手を放し、天王寺は逃げる様に自分のハーレムに戻って行った。
「全くもう。」
由香里子は起き上がって無造作に散乱した机や椅子等を定位置に戻し始めた。
それを見て、ようやく俺の頭は正常に動くようになった。
「お、俺も手伝うよ。」
「ありがとう。鈴木君。」
この作業時、由香里子がボソッと俺だけに聞こえる声で話し掛けて来た。
「鈴木君が眼鏡外せって言うなら、私すぐにでも眼鏡外しますからね。」
「えっ⁉」
それってつまり・・・?
顔を赤らめている由香里子。俺は鈍感系主人公ではなく、ただのモブなのでこういうことに察しが良い。天にも昇る高揚感が俺の体を駆け巡った。
「あと、デートの時でも良いんで胸揉んで下さい。初めては鈴木君って決めてたのに・・・もう。」
「えっ、は、はい。喜んで。」
俺の好きな人は意外にも積極的であった。
この世界は恐らく高校生ハーレム物の作品の世界なんだが、モブの俺は隣の眼鏡女子が眼鏡を外してハーレムに参加するんじゃないかとビクビクしている タヌキング @kibamusi
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