私も同人活動始めてみた!300冊刷って1冊も売れなかった話

遙那悠氣

第1話

「同人活動始めてみました!」



自分が二次のキャラクターにハマり、オタクになって、

同人活動をやるなんて思っても見なかった。


元はと言えば、中学校の頃、

同じ教室の、少し小太りだがとてもコミュニケーション能力のある女の子、千里(ちさと)が、

魅惑のアニメ雑誌を持ってきたからだった。


ーーー



当時、私は、親の英才教育のせいで、学校の授業が終われば、塾やピアノ&英会話のレッスン。

多忙な毎日だった。

好きでやっていたわけではない。

強制的な親の教育だ。


授業が終われば、今日はピアノのレッスン。

別に好きでやってるわけじゃないから、嫌々やっていた。

本当にレッスンはどうでもよくて、やりたくもなかった。

とりあえず親には言われるがまま従っていた。


学校が終われば、

家にいったん帰り、ピアノに行く準備をする。


ピアノ行きたくないなあ~と思いながら


TVをつけた、そうすると、 

ある男向けのアニメが流れていて、それをぼんやり見ていた。

それは当時流行っていた、

有名なロボットのアニメだった。

名前は知っていたが、内容はよく分からなかったので

アニメを、見るまでは興味も無かった。


ロボットアニメは世界観が難解な作品が多く、 

私はあまり頭も良くなかったので、難しいのは頭がこんがらがるし、

あまり見る気がしなかった。


ロボット系のものは男しか理解出来ないかな?と思ったから。

しかしその、ロボットのTVアニメを見てみると、女にもわかる内容で、世界観に何となく入り込めた。


何より、キャラクター達がとてつもなくカッコよかった。


え?こんなにカッコいいキャラが、アニメにいるんだあ とその時は思った。


朝が来て、朝食を食べ、

短めに整えたショートヘアーを適当にブラシで梳かし、

毎日の学生の本分、学校に行く。

時間がきて、急ぎ足で中学校へ登校した。

教室に付き、皆の朝の挨拶大会がはじまる。

「有世(ありせ)おはよー」

私は自分の名前を呼ばれ

おはよーと言った

そして、昨日のアニメの事を思い出し、

黒く長い髪を無理やり三つ編みに編み込んでいる千里に話かけた。



「ねえ、ねえ 千里、

昨日TVつけたらさ、アニメやってて、

キャラがすっごくカッコよかったんだけど、このアニメ知ってる?」 


すると、千里は目をかっ!!と

見開きながら瞳を輝かせ

「知ってるって! 

このキャラめっちゃ好きなんだけど!」

とたぶんロボットアニメに出てくるキャラのグッズを見せられた


なにこれ? と私は首をかしげた


「知らないの? 

あのロボットアニメに

出てくるキャラだよ!」 


こんなキャラのいたっけ?とアニメの映像を思い出す


「こないだは、あんま出番無かったから、このキャラ出て無いねん。

このキャラマジで良いから!

明日アニメ雑誌持ってくるわ!」

と千里に激押しされ

元気まんまんに言われたので

私も何故かウキウキして次の日になった。


次の日の朝、千里がパタパタと私に向かい走ってきて、

どや!と言わんばかりに

ロボットアニメWの記事が載っているアニメ雑誌を開いて見せてきた。


実際アニメ雑誌を見てみると、

たぶんアニメ雑誌は、

あまり見たことがなかったから初めて見るかも、

かっこいい可愛いキャラがたくさん載っていて、

私は夢中で読ませてもらった。

アニメ雑誌の付録についていた、 

アニメシールというものを貰い 

若干、子供ぽいかな?と思いつつも、その好きなキャラの顔が入ってる絵があまりにも嬉しくて、貼る場所に迷った末、

学校の机にシールを張る事にした。 

学校に行きたくない気持ちを少しでも、やわらげ

学校に行く後押しをされてるような気がしたから


学校は、私は勉強が大嫌いで、 友達と話したりするのは好き だけど

勉強の大半を占める時間が苦痛で仕方ないから、

毎日勉強が無くて、友達と話すだけなら良いけど。


それを見ると、嫌な学校の授業が、

机にアニメシールを貼る事により

、とてつもなくそのキャラに学校行くのを応援されているような、そんな

勇気が出るような感じがして

学校に来るのが楽しくなった。


そして、そのロボットアニメを毎週見ていくうちに 

生きがいが増え、アニメを見ると

どんどんそのキャラの事が知りたくなり、

本屋に行き そのキャラが乗ってる雑誌を探した。


再び毎日の教室で、朝の授業も終わり、昼休憩になった。

すると千里が今度は 

「ねえ、こんな本あるの知ってる?」

と小さな薄い本を取り出した。


「何これ?」

それは私の好きなアニメのキャラが描かれていた薄い本だった。

中を開くと

私の好きなキャラのイラストや漫画が乗っていた。 

「何これ?本屋で売ってるの?」

私は千里に質問した。


「違うよ、普通の人が描いてるんだよ」


「普通の人が描いてるの? 」

私の質問に千里が答えた


「うん、同人誌っていうの 

コミケって所で売ってるねん」


コミケ? 


「うん

アニメとか好きな人が集まって、

そのキャラを描いて本を売ってるんよ」


「へー 自分で本作れるの? 行ってみたい」


興味が湧き

その土日、なんの知識もないまま

千里とコミケに初めて行った。


千里は大きな絵の書かれたカタログを持っていた。


初めてのコミケは、大きなコンクリート場の建物に、

とにかく沢山の人が居て、

倉庫みたいな場所で、迷うくらいの広さで、そこに、個人がお店のような物を開いて本や、色々な商品を売っていた。    


あまりにも情報が沢山で脳の処理が追いつかない!


私は大きな、ロボットアニメのキャラが描かれたイラストポスターを見て、

ドキドキしながら

そのブースに近づくが、勇気が無くて 話せなかった。

この人がこれ描いてるんだなあとチラチラ見る事しか出来ず


緊張して、本などを販売している場所に、近寄る勇気が無かった。


結局、ブースを見ても、近寄る勇気がなく遠巻きにぐるぐる見てるだけだが、 

昼以降落ち着いたら、

勇気を出して、自分の好きなキャラが載っている本を買ってみた。


近づくにも勇気いるのに

これ下さいと

話しかけるのは、

とてつもなく勇気がいるのだ。  


「か、かえた!嬉しい」


ドキドキしながら大事に本を鞄にしまう


「買えた?良かったねえ―  」 

千里と喜びしながら


コミケから帰宅

あまりの情報の多さに、

心身共に疲れ果てたが

この緊張と嬉しさに、

心はぐちゃぐちゃドキドキしていた。


買ってきた本を読んだ。 

薄い数十ページだけど、

キャラの絵、キャラへの愛が詰まっていた。

心がキュンとなり胸が締めつけられる

この気持ちはなんだろう?と自分に問いたけど分からない。

ただ普通の人でも、本って作れるんだー

すごいなあ と思った。


私も絵うまかったら出せるのに、… いや、練習したらかけるよね?


私はとっさに、そのキャラの絵を練習した。本作るなら

漫画、そうだ漫画描いてみよう

と思ったが、結局描けず、

イラストしか描けなかった。 


私が本を作るなら、どんな本を出そう?と想像を膨らまし必死で考えた。


何時も漫画を描こうとして

1ページで終わってしまう人間だった。


漫画書こうとすると、イラストになっちゃうんだよねえ…


何で、漫画は最後まで書けないんだろう?


自分でこういう話が、

書きたいというのはあるんだけど、頭で考えているイメージが、 

絵に出せない、紙に書けないどうして?


文字ではある程度書けるが、 

でも、この文章や、背景シーンを説明する時、なんと書いて表現していいか分からない。


うーん、小説だと表現が難しそう、

背景なら、町とかで、 

写真取ってきて、それをなぞれば描けそうだし、

小説よりも、絵ならなんとか…

それに、本の余白を文字で埋めるよりも、スペースに絵も欲しい。


そうだ、漫画描いて、  

ページ余ったら小説入れてみたらどうだろう?


漫画なら、絵とセリフでごまかせるかな?


もし私が本を作るなら、

こんな感じかな~と妄想を膨らませ何だかんだで、

結局イラストを描いただけで終わっていた。


数か月後、千里が教室で、興奮気味に騒ぎ、私に話かけてきた。


「私ね、今このアニメにハマってて、本出したん!」と

千里が、自分で描いた

和風イラスト作品集を本にした同人誌を持ってきた。


「これ作ったの?」千里に問う。

「作ったよ〜 初めての本 同人誌」


なんてこった!

千里に先を越された!

私も、本作って見たかったのに!


焦りから、千里に質問攻めをする

「どうやって本作ったの?」


千里は答えた

「えっとパソコンでね

ネットに調べたらのってるよ」と教えられ、私はすぐさま調べた。


いや、本の作り方は分かったけど 、まだ肝心の中身描いてないじゃん!と自分で突っ込んだ。


そう書かなきゃ  

千里が作れるなら私にも、作れるはず!


とりあえず、ネーム描こう、

頭で考えたものを形にする。

そして、お小遣いを使い漫画を描くソフトを購入した。

私も本を出す!と決めたら、決意と行動は早かった。

いざ描く、

しかしPCで漫画ソフトを使って描くと、ペン入れがうまくいかない。


pcで絵描くの難しいよおー

いや、負けない千里にも本出せたなら、

私にも本が出せるはず!と

千里に対して勝手に闘争心を燃やした。

と、漫画を描くソフトの扱い方すら苦戦していた。


アナログで描けば良い?

アナログで漫画描くのも良いが、

私は以前少しアナログで漫画原稿も練習した。

しかし、シャーペンで下書きをして、

ペンをいれた後の処理が嫌いで、

ペン入れの後の、インクべったりな原稿用紙の乾いていない状態で、

消しゴムかけたら、線が汚くなるし、その消しゴムを使った後の、

消しゴムカス掃除が嫌いで、うわーあああ!となったからだ。

だったら、パソコンで描く!になった。


そんな事もあり、私は自分を追い込むことにした。

そうだ、本作るなら、印刷所先に予約したら、なんか絶対、描くから間に合うじゃん!

探してみるが、印刷所は全部高い。

貯金じゃきつい。

そんな中、7月限定の安いコース。

表紙カラーで、中身は白黒で、300部で3万円の安そうなコースを見つけた。

安いと言っても充分高そうだが、

相場もよく分からず

そいや、部数も何冊いるのか全然考えてなかった! 

ネットで調べたら

300部程度で良いかもと書かれていたので、情報を信じ鵜呑みにし

じゃァ、300冊くらいで良いかーと

あまり、よく調べずにネットに格安!と乗っていた300部で、3万円印刷コースを申し込んでみた。

しかし、これが後に大後悔する事になる。


私は、何も知らず、1番お得と書かれていた

たぶん一番安い3万のコースで印刷所の印刷を申し込んだ。


これでもう後には引けない 

絶対本出すんだ!

原稿はまだだけど、

とりあえず漫画描くソフトのやり方覚えよう…


そこからなの!?と言いたいが 仕方ない。

やる気になった時がやり時である。


そうだ、本出すなら、折角だし

私もコミケに出よう!ともう全部赤字覚悟で申し込んでみる。


コミケとりあえず適当に

も、申しこんじゃった! 落ちなきゃいけど

夏のコミケの時期に合わせ

印刷所はの本の予定も合わす。


コミケは、落ちたら、出れないらしい初めて知った。

落ちたら落ちたで、コミケは諦めたら良い。その分、サボれば良いし。

当選を待っていたが

受かると思って無かったが、

なんか受かっていた。ヤバイ受かってるじゃん!

今から準備しないと、全てが初めての事ばかりで、もう訳が分からなくなってくる。


漫画も2ページ以上描けた事が無いし

漫画作成ソフトも今から覚えながら使うし

本作りも初めて、コミケ出るのも初めて

この夏は!忙しい!

何故、衝動的に考えなしに行動したのか、問い詰めたいが、もう申し込んでしまったし、なるようになれ!初めて私は多忙な夏の時期を迎えた。



とりあえず、本出す原稿何とかしよう、そうこうしているうちに、もう締め切りまで一か月前になった

ヤバいじゃん!

何だかんだで、描き始めたのは7月中旬 残り2週間しかない!

私何やってんの! 初めて描く漫画が、初めての本で、ちょっと無謀過ぎたかも。

しかも300冊くらい売れるという情報をうのみに

300冊も印刷所予約した、家のスペースあるのか?もう後には引けない



何だ、かんだで、私漫画かけるじゃん!と自画自賛し、毎日1ページ描いたら間に合う!と計算して

しかし、表紙に1 週間くらい費やしてしまい。日にちは大幅にオーバーした。

何故ならカラーイラストもまともに描いた事が無かったからだ。

大体、イラストもいつも落書き止まりだった。

そんな締切に終われた日々は

寝ないで作業が当たり前になり

ともかく締切に合わせるように

入稿を済ませ 何とか本は間に合った! 

だが、次はコミケ準備!休んでいる暇など無い。

ネットでコミケの準備の仕方を調べ


そしてついにコミケの日になる。

いや、コミケ当日になったが

え?どうするのかさっぱり分からん

とりあえずサークルチケットに書いた時間に行く。


そして、出店する、商品の下に引くシートは用意した。

後は、売るだけ! 

そう、私は自分の本は、なんか全部売れると思っていた。




そんな状態で初コミケ


売り方もよく分からないまま、

友達を呼び、売り子を任せ。

自分は、サークル入場で、

早めにコミケに到着したので、好きな作家さんの本を買える!と思い、

買い物に、せかせか動いた。


そして開場時間から少し時間がたった後、自分のスペースに戻った。

誰か、私の本を買ってくれるはず そう信じていた。

しかし、

待てども、待てども、誰も来ない。 そうまるで、皆私の事を知らないように。


あんなに頑張って本を描いたのに。

そういえば周りを見渡すと

snsの話題が聞こえた。

もしかしてみんな宣伝とかしてるの?

私は、宣伝も何もしていない事に気づいた。


私は、当時SNSも全くやっておらず。

ネットに書いたこともないし、

自分の本の宣伝などもした事もなかった。

もちろんネットに、投稿などもした事が無い。 


だからか、そうまるで私のブースは誰も皆私のことを知らないような そんな雰囲気がした

そう宣伝する必要がある事すら知らなかったのだから。


何もせず、コミケで座っているだけだった。

昼以降になると、宣伝や、告知がいかに必要なんだと段々わかってくる。


座りながら考えていた

ただ、描くだけじゃ本を出すだけじゃダメなんだ。

売れなきゃダメなんだと

そして、コミケの会場を観察し、

本を出すのは当たり前、 

それで宣伝や交流なども大切なんだと悟った。

明らかに私の勉強不足だった。


座るだけの時間が過ぎ、コミケは閉場を迎えた。


そう、300冊刷ったのに1冊も売れなかったのだ。

あれだけ費やした時間、体、費用、

全て無駄だったのかと絶望した。


信じたく無い。 この事実を

現実はもう信じたくないが、

この一冊も売れなかった

残りの300冊。  

そしてこの何箱も重い段ボールをどうしようかと

持って帰るのか?置く場所がない


何度も後悔した、

初めて描いた漫画で、

初めて本出して、

初めてコミケ出て

まったくネットでも宣伝も無しに 300冊も売るのは無謀だったと気づくのであった。

そもそもそこまでの情報は調べてなかった


途方に暮れ

この残りどうしようと泣く泣く

とりあえずネットで検索し、本の委託ショップに、ダメ元でお願いした。 



そうして、残った本を売るためだけに

snsを始め、私の本の宣伝をした

そうすると、少しずつだが1冊ずつ

また1冊ずつ

私の大量の本を委託した本が売れ始めた。


1冊でも売れたらとても嬉しかった!

初めて描いた漫画、本、売れるんだ!と、買ってくれる人に認めてもらえる気がした。

snsで告知、有名な店に置いてもらえるだけで売れるんだ。

ああ、やっぱり大きな宣伝が足りなかったんだな と学んだ。


同人誌の委託ショップは、

沢山あって、冊数が多いので何か所かに委託する。

少しずつだが、じわじわと売れてきのが嬉しくて。


初めて描いた漫画なのに買ってくれて、ありがとうと思わざるを得ない。


そう、数か月後に、再度

私の描いた同人誌を見てみると、

あまりの下手さに、もう見たくなくて、黒歴史に認定してしまいたいほどだ。


何故なら、今は、

以前の本の反省点を踏まえ、

過去の黒歴史と化している本の記憶の上書きをしたくて


本を買ってくれた人に、

私もっと上手くなって、

更に面白くなってるから

絶対に新しい本見てくれ!とアピールするように


さらに、新たな2冊目を、

描いている途中なのだから…




ー完ー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私も同人活動始めてみた!300冊刷って1冊も売れなかった話 遙那悠氣 @AngelGold358

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ