第103話 私の従魔
スキルの再確認が終わったから、次は従魔の再確認をしよう。
スラ丸 ゲートスライム
スキル 【浄化】【収納】【転移門】
スラ丸は私が最初にテイムした従魔で、微かに白っぽい半透明の粘液だよ。
体長は最小で三十センチ、最大で三メートルくらい。伸縮自在で、普段は身体を丸くしている。
普通のスライムは蛞蝓みたいに這って移動するけど、スラ丸は転がって移動するから、創意工夫が出来るだけの知能を有している。
こういう、通常の個体とは大きく異なる部分を持つ魔物は、ユニーク個体って呼ばれているんだ。
スラ丸は分裂を繰り返しているので、今では一号、二号、三号の三匹がいる。
一号は私の荷物持ちとして活躍中で、二号はお店の倉庫、三号はフィオナちゃんに貸し出しているよ。
【浄化】──不浄を消し去る。
これは、スラ丸がクリアスライムだった頃から持っていたスキルで、衣服の汚れ、身体の汚れ、水の汚れなど、様々な汚れを綺麗にしてくれる。
更に、ゾンビとかゴーストに対して、ダメージを与えられるという効果もある。
このスキルを駆使して、スラ丸には聖女の墓標を探索させていた時期もあった。
でも、不測の事態が起こって、あのダンジョンが如何に危険なのか理解したので、今は探索させていない。
【収納】──異空間にものを仕舞える。
これは、スラ丸がコレクタースライムに進化したときに取得したスキルだ。
分裂した個体同士で、異空間を共有しているから、スラ丸一号に仕舞って貰ったものを二号に取り出して貰う、なんてことも出来る。
この仕組みを利用して、アクアヘイム王国の物流が大きく進歩したから、コレクタースライムは革新的な魔物だと言えるね。
【転移門】──距離を無視して移動出来る門を作る。
これは、スラ丸がゲートスライムに進化したときに取得したスキルで、分裂した個体がいないと使用出来ない。
ゲートスライム自身が門になるから、出口と入り口で、最低二匹は必要だよ。
それと、門になったゲートスライム自身は、この門を潜れないという制約がある。私は【従魔召喚】を使ってスラ丸を回収出来るから、この制約は大したデメリットにならないけどね。
ティラノサウルス シャドーウルフ
スキル 【気配感知】【潜影】
この子は私が、『ティラ』という愛称で呼んでいる狼の魔物だよ。
毛並みはモフモフで、色は黒。体長は二メートルくらいで、鋭い爪と牙を持っている。
進化前はヤングウルフという小さな狼で、弱々しい魔物だったけど、一段階進化しただけで随分と頼もしくなった。
ティラと出会ったのはスラム街で、食肉にされそうになっていたところを助けたんだ。そんな出会い方だったから、この子は私によく懐いている。
【気配感知】──周囲に存在するものの気配を感知する。
これは、ティラがヤングウルフだった頃に持っていたスキルで、逸早く敵の存在を感知出来るから、とても重宝しているよ。
私が外出するときに、必ずと言っていいほどティラを同行させるのは、このスキルの存在が大きいからだ。
【潜影】──影の中に潜る。
これは、ティラがシャドーウルフに進化したときに取得したスキルだね。
私の影の中に潜ませれば、従魔の立ち入りが禁止されている場所にも連れて行ける。
世の中、どこで何が起こるか分からないから、ボディーガードは常に傍にいて欲しい。そんな私の望みを叶えてくれるスキルだよ。
ローズ アルラウネ
スキル 【竜の因子】【草花生成】
アルラウネとは、大きさが一メートルくらいで、上半身が人型、下半身が大きな花という魔物だよ。
普通のアルラウネは、人型の部分が人間とは掛け離れた見た目をしているため、上半身だけを見ても一目で魔物だと分かる。
けど、ローズの上半身は、人間の童女みたいなんだ。
彼女はエメラルドグリーンの波打つ長髪と、金色の瞳を持っている。
白い肌は極僅かに緑がかっており、瞳孔が縦に長くて爬虫類っぽいから、そこは人間らしくないかな。
下半身は大きな深紅の薔薇で、この部分を含めて見れば、魔物なんだと明確に分かる。
そんなローズは、『ローズクイーン』という強大な魔物の転生体だ。
ローズクイーンだった頃の能力と記憶は持っていないけど、特殊な出生だから、特殊なスキルを持っている。
【竜の因子】──身体に竜の特徴を発現させて、身体能力と炎熱耐性が上がる。
これが、件の特殊なスキルだね。ローズクイーンは人の手によって討伐されたんだけど、その際にドラゴンパウダーという代物を口の中に放り込まれた。
ドラゴンパウダーとは、竜の逆鱗を素材にして作られた超強力な燃える粉で、これによってローズクイーンは燃え尽きたんだ。
その一件が原因で、ローズはこのスキルを取得したんだと思う。
【草花生成】──花弁と葉っぱを生成する。
これは、私がお店を営む上で、無くてはならない生産系のスキルだよ。
ローズの花弁はポーションの素材になって、葉っぱは美味しい紅茶を作れる。
ポーションも茶葉もよく売れるものだから、私はローズがいるだけで、ご飯を食べていけると思う。
私のスキル【魔力共有】を使って、私と他の従魔たちの魔力をローズに供給すれば、大量の花弁を生成出来るんだ。
更に、私のスキル【耕起】を使えば、花弁の品質が向上して、中級に限りなく近い下級ポーションの素材になる。
質と量、その両方を高水準にすることが出来たから、総合的に見ると私が街一番のポーション生産者だ。
ブロ丸 ブロンズボール
スキル 【浮遊】
この子は無機物遺跡でテイムした魔物で、その姿は宙に浮かんでいる銅の球体だよ。
移動速度が遅いし、上から落ちてくるというシンプルな攻撃しか出来ないけど、防御力は結構高い。
それと、寝食が必要ないから、コストパフォーマンスが良い子でもある。
私の身の回りの戦力を底上げしたいから、そろそろブロ丸を進化させようと思って、図書館で進化先を調べてみた。
その結果、二種類の進化先があると判明。
宙に浮かぶ鉄の球体、アイアンボール。
宙に浮かぶ銀の球体、シルバーボール。
前者は物理防御力、後者は魔法防御力が高いみたい。
それぞれ、ブロンズボールに鉄と魔石をいっぱい取り込ませるか、銀と魔石をいっぱい取り込ませることで、進化条件を満たせる。
鉄と銀、進化させるための費用が段違いで、ちょっと悩ましい。
鉄より銀の方が高価だから、お財布と相談するならアイアンボールだけど……個人的には、魔法防御力が高いシルバーボールの方に、魅力を感じてしまう。
物理防御力って、あんまり信用出来ないんだよね……。それを無視するスキルが、世の中には存在しているから。
うーん……。でも、アイアンボールだって、欲しいと言えば欲しい。
ブロンズボールをもう一匹テイムして、鉄と銀の両方を揃えようかな。
ちなみに、進化後に取得するのは、どちらも同じ【変形】というスキルだよ。
【浮遊】──宙に浮かんで移動する。
これは、ブロンズボールが最初から持っているスキルで、他に特筆すべき点がない。
【変形】──自分の身体の形を変えられる。
このスキルを使って、ブロ丸が球体から盾の形になってくれたら、私を守りやすくなるね。繭の形になって、全方位防御なんてことも出来るから、是非とも取得して貰いたい。
タクミ ブロンズミミック
スキル 【宝物生成】
この子もブロ丸と同様に、無機物遺跡でテイムした魔物だね。
銅の宝箱に擬態していて、自分でお宝を生成して人を誘き寄せ、パクっと食べてしまう。それがミミックだよ。
ダンジョン内に出現する銅の宝箱。その中身をランダムで生成してくれるんだけど、高価なものが出ることは滅多にない。
魔力の消耗量が多いから、最近では店内の置物と化している。
【宝物生成】──お宝を生成する。
浪漫を感じるスキルだけど、ローズに花弁を生成して貰った方が、確実に稼げる。それでも、魔力に余裕が出来たら、一日一回の運試しで使っていこう。
ゴマちゃん アザラシ
スキル 【花吹雪】
この子は流水海域でテイムした魔物で、その見た目はゴマアザラシの赤ちゃんだよ。
普通のアザラシは体毛が白いけど、私のゴマちゃんは桜色。毛並みがフワフワで、最近は抱き枕にすることが多い。
丸っこい眉毛みたいな模様がハの字だから、いつも困り顔に見える。円らな瞳と相まって、本当に愛くるしいんだ。
ゴマちゃんには、私の心を癒すという重要な役割があるから、絶対に進化させないよ。
【花吹雪】──四色の花弁をランダムで撒き散らす。
普通のアザラシは【吹雪】という、冷気と共に粉雪を撒き散らすスキルを持っているんだけど、ゴマちゃんのスキルは完全に別物だ。つまり、ユニーク個体だね。
このスキルによって、ゴマちゃんが出せる花弁は、黄色、桃色、紫色、緑色の四種類。
一つ目から順番に、麻痺、睡眠、毒、状態異常の回復という効果を持っている。
これらは全て薬の素材になるから、ゴマちゃんは私を癒してくれるだけじゃなくて、お店の商品を増やしてくれるんだ。
グレープ ヤングトレント
スキル 【果実生成】
グレープは私が【耕起】を使って、葡萄の苗木を魔物化させてから、テイムした子だよ。
我が家の裏庭を守りながら、美味しい葡萄を供給してくれるんだ。
その見た目は一メートル程度の背が低い果樹で、外敵に攻撃する方法は、先端が尖っている根っこを地面から突き出すというもの。
攻撃系のスキルは持っていないけど、革の靴底に穴を開けるくらいの威力はある。
私のお店は表通りに面しているから、犯罪者に狙われ難い。
裏庭は【土壁】で囲んでいるので、侵入だって難しいはず……。
それでも、防犯のために、グレープを進化させたい。
他の生物を自分の手、というか根っこで沢山倒していると、直接的な攻撃が得意なトレントに進化するみたい。
逆に、自分の根っこで生物を殺傷しないまま、果物を沢山実らせていると、果物に毒を仕込めるトレントに進化するんだって。
私が望む進化先は、前者の直接攻撃タイプだよ。
泥棒が押し入った家の庭先で、果物を発見したとして、『ラッキー! いただきまーす!』とはならないだろうし、毒殺タイプのトレントは微妙だと思うの。
進化条件を満たすための、殺傷する生物に関しては、丁度いいのがいるんだ。
私の【耕起】を利用して、ミケが家庭菜園で育てているトマト。これが定期的に魔物化するから、収穫のついでにグレープが倒してくれたらいい。
【果実生成】──果物を実らせる。
グレープの場合、実らせることが出来るのは葡萄だけ。
普通の果樹から採れる葡萄よりも、品質が高い。甘味、酸味、香りなどを調節出来るから、用途に合わせた葡萄を生産出来るのも、大きな魅力だよ。
私の【耕起】と合わせれば、葡萄の品質を更に向上させられる。
これもお店の商品に出来るんだけど……あれもこれもと売って、商売敵を増やすのは、ちょっと怖い。
数を抑えた高級路線で売るとか? ワインを作るのも面白そうだけど、私はまだ未成年だからなぁ……。まぁ、その辺は追々考えよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます