今日も都には雨が降る
幽々
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その日、鷹派の議員が一人死んだ。
私は郵便受けから叔母からの手紙を抜き出しているところだった。雨が降り続いている。少し肌寒い。私は階段を上がりながら、剥き出しの二の腕をさすった。
叔母を名乗る人物は、定期的に私の元へと手紙を送ってくる。私が返事を返すことを想定して。今の所、私は返事を書いてはいない。
部屋に戻ると、一人暮らしの一LDKが私を出迎えてくれる。酒が転がり、テレビが冷たい音を流している。
『 拝啓 リリィ様
体調等、変わりありませんか。私の方はとっても元気です。余りにも元気すぎるせいか、最近、こちらのお友達に小言を言われました。あなたも私と同じくらい、元気でいてくれると嬉しいです。
最近、ベランダの使っていないプランターの中に、鳥が巣を作り始めました。折角作ったのに今更追い出すのも可哀想なので、そのままにしています。後で調べてみたら、それはカワキドリというそうです。この国の国鳥でもあり、白と黒のグラデーションがとても美しい、でもずんぐりとしていてとても可愛らしい見た目をしています。また、写真を送ります。
リリィは、事務の仕事が色々と大変だそうですね。友達の息子さんはお仕事が夕方になっても少しも片付かないと言って、週末になるといつもお母様に泣きついているらしいのです。とても可愛らしいお話ですね。でも、その点、あなたは大丈夫ですか。きちんと休憩は取れていますか。同僚に嫌な人がいて、嫌がらせを受けたりしてはいませんか。やられたら、それなりに賢いやり方で、ひっそりとお返ししなさいね。時には実力行使も辞さない構えで。
一つ、お願いをしてもいいでしょうか。一度でいいから、あなたが映った写真を見てみたいのです。一度で構わないのです。今のあなたの姿が見てみたいわ。
いつもあなたのことを思っています。
かしこ』
私は叔母を名乗る人物からの手紙を読み終え、ファイルの中に綴じた。ファイルはもう数ヶ月分にもなる紙の厚さで膨らみ、私はひっそりとため息を吐く。私にどうしろというのだ。背中が少し張っている。私はベッドに身を投げた。
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