いつの間にか三股！？イジメが怖くて鍛えたらとんでもないことになった

勉強会の約束

「あー……」

やっぱり。

需要多いんだな、偽装彼氏。

「何その反応？」

「いや、驚いて。

えーっと、ナンパ避けの偽装彼氏ってことで良いんだよね？」

「あら、話が早くて助かるわ」

「別にいいけど、なんで俺？

他のやつでも良くない？

日野くんとか」

別に今回はラガーマンが相手とかじゃないし。

「彼はダメよ。

明子が狙ってるもの」

「え？」

明子って佐野明子さん？

クラスのギャルの？

結構可愛くて評判の？

あっそうなの。

すごいね。

……羨ましいとかではなく。

「えーっと……」

「他に防御壁になってくれそうな男子は他の女の子と揉めそうだから嫌なのよね。

やっぱりある程度のスペックは必要だし。

その点武田くんは最高だわ。

男子に一目置かれてるし、女子には怖がられてるし」

「……そんなに怖がられてるの？」

「まあ別に友達とかなら問題ないでしょうけど、付き合うってなると無理じゃないかしら？

教室で技みたいなのかけてるでしょ？

ああいうの良くないわよ」

「あれは教えてくれって言われたから実践してるだけで……」

「そうだったのね。

でも会話の内容なんて聞こえないわ」

「あー……」

お前に彼女はできないって宣言された。

辛すぎる。

「それに、あなたにもメリットがあるから提案してるのよ？」

「メリット？」

どんな？

ドヤ顔できるとか？

「あなたが怖がられているのは、怒ったとき暴力を振るうかもしれないと思われてるから」

「そんなことは」

「最後まで聞いて」

「……はい」

美人が怒ると怖い説立証。

「つまりどんな人か分からないから怖がられてるのよ。あなたのイメージは教室で技とかかけちゃう系の格闘家ってことだけ。

そこで1年くらい私の彼氏として演技をして貰えば、私から貴方は暴力を振るうどころか、とても優しくて私をナンパから守ってくれる人だと宣伝してあげるわ」

「お？」

なるほど。

思ったより合理的だった。

交際相手のいる男はモテるという話を聞いたことがある。

品質保証シールが貼られているようなものだと。

ましてやそれが市姫さんともなれば効果は絶大。

確かに、大きなメリットだ。

「流石に1年もたてば落ち着くでしょうし、元彼が格闘家ってことになれば粘着してくる人も減ると思うの」

どうかしら？

と、首を傾げる市姫さん。

こちらの答えは決まっている。

二股？になってしまうが、まあ問題ないだろ。

本当に付き合うわけじゃないし。

あ、そうだ。

例の件もお願いしてみよう。

偽装の信憑性も上がるし、断られないはずだ。

「分かった。

そういうことなら受けるよ」

「そう、ありがとう。

助かるわ。本当に参ってたの」

「でも一つだけ条件がある」

「条件？」

腕を組む市姫さん。

腕を組む行為は警戒心を表しているらしい。

まあそりゃそうか。

学校を選んだのも叫べば人が来る環境だからってことだろうしな。

「勉強を教えてくれない？

場所は学校の自習室とかでいいから」

自習室には先生が常にいる。

これなら警戒も解いてくれるだろう。

「別に構わないけれど、教えるのは得意じゃないわよ？

塾に行った方がいいと思うわ」

「知り合いに早稲田でた人がいてさ、その人が言うには、分からないことは今の時代ネットで調べればいいけど、勉強のやり方を学ぶには得意な人と一緒に勉強して真似するのが1番効率が良いらしいんだ」

勉強ができない人の多くは勉強のやり方が下手なのだと言ってた。集中できる環境作りと時間配分、優先順位などなど。

多分俺はそれが下手だ。

今の高校だってイジメへの恐怖が後押ししてくれた結果、なんとか受かったくらいだし。

もっと効率のいいやり方がある、はず。

根がバカだとは思いたくない。

「勉強のやり方ねえ……、意識したことはなかったけれど、

そういうことなら構わないわよ。

付き合ってるって証明にもなるし」

「ありがとう。

それじゃあよろしく」

「ええ、よろしく」

やっと腕組みを解いてくれた。

これで成績問題も解決……するといいなあ。

「それじゃあ写真撮りましょうか。

LINEの壁紙変えなきゃ」

「あ、俺はそのままでもいい？

ジムの人に揶揄われるんだよね。

照れてるってことで」

「構わないわよ。

でも演技はよろしくね」

「任せて！」

夏休みに教室の窓際で制服のツーショット。

偽装とはいえなんか青春だな。

最後に勉強の予定確認や約束事などをして解散となった。

しかし、一学期は話す機会が無かったから知らなかったが、

かなり愉快な人なんだな。

漫画のキャラみたいだ。おもしれー女ってやつ？

その日の夜、市姫さんがグループLINEで交際宣言をして軽い騒ぎになった。

騒動の後すぐ日野くんから電話がかかってきたので彼には事情を説明した。

納得してくれたが困惑していたので、市姫さんが好きなのかと聞くと違うという。最後はおれしーらねっ、といって切られた。なんだったんだろう？

まあいいや。

成績問題も目処がたったし、

試合に向けて頑張るぞ！