美人JK 市姫凛

7月中旬。

今日はジムの日だ。

試合が近くなってきて練習も過酷になってきた。

まだ始めて半年もたってないので技術練習も必要だし、スタミナの強化も必要だ。

やることは多い。


残念なことに俺に打撃センスはそんなに無いらしく、

タックルして極める作戦になった。

そうなるとレスリングの練習が大事。


ちなみにレスリングの練習はめちゃくちゃきつい。

初めて練習で吐きそうになった。

これでもオリンピック目指すような人の10分の1の練習量らしい。

吉田沙保里すげえ。


練習が過酷になると疲労が溜まる。

そうなると勉強に身が入らない。

ただでさえ試合が近くてナーバスなのに。


とはいえ成績を落とすわけにもいかない。

親にお金を出して貰ってる以上、怒らせない程度には成績を上げる必要がある。


ジムにいる高学歴の人(大手メーカー勤務30代男性既婚者)に話を聞くと、勉強が得意な人と仲良くなって、そのやり方を真似すると良いらしい。

ちなみにそんなやつは身近にいない。


日野くんの成績は俺と変わらんしな。

どうしたもんかと思ってると、LINEの着信音が鳴った。

梨衣花ちゃんかな?


ちらりとスマホを確認する。

違った。

というかLINEの友達からじゃない。

クラスのグループLINEから俺を探したのか?

急になんだろう?

ちょっと怖い。

だが、断るのは違う。


だってそれは、クラスで1番綺麗だと噂の市姫凛からのお誘いだったからだ。




後日。

ジムが休みの日に予定を合わせた。

待ち合わせ場所は学校の教室だ。

夏休みとはいえ部活はやっている。

俺は部活に入ってないが、まあまあ生徒はいる。

なので変な目で見られることは無いが、なんで教室?

まあいいけど。


約束の時間の10分前に着いた。

だが、彼女はすでに待っていた。

すごいな。

彼女なら時間ぴったりに着くことなんて楽勝だろうに。


「急に呼び出してごめんなさい。

でもメールや電話じゃあ誤解を生むかもしれないから直接会って話したかったの」


「別に日程合わせてくれたし大丈夫だよ。

それで?結局用件ってなんなの?」


LINEで聞いたが教えてくれなかった。

告白……は無いよなあ。

今日初めて話すし。


「武田くん、私の家知ってる?」


「えーと……、場所のこと?」


「そうよ」


それなら知ってる。

というか彼女のことを知ってる人はみんな知ってるだろう。


「まあ、うん。

噂になってるし」


「そうよね。

……はぁ、入る前にもうちょっと考えればよかったわ」


ため息をつく市姫さん。

彼女は学校でも結構な有名人なのだ。


まず美人だ。

とても大人びた外見をしていて、まるで女優のようだと噂されている。


そして成績も良い。

期末では学年1位だった。

もっと上の学校を目指せたらしいけれど、あえてうちの学校に入学したらしい。


最後に、家が近い。

もうめちゃくちゃ近い。

校門を出て道路を挟んだ目の前の家が彼女の家だ。


つまりめちゃくちゃ美人で成績優秀な新入生の家が学校の目の前にある、という状況なのだ。

そりゃあ噂にもなる。


「近いからって理由でここに来て既に後悔しているわ。まさかこんな弊害があったなんて」


「まあ移動時間ってロスでしかないから気持ちは分かるけどね」


「そうなのよ。

レベルが上の遠い学校に電車で通うよりも、その時間を勉強に当てた方が有意義だと思ったのだけれど、軽率だったわ」


ため息をつく市姫さん。

自分の顔のレベルを軽視していたのか思春期の男のバイタリティを軽視していたのか。

まあでも可哀想ではある。


「で、今は軽いストーカー被害にあっているの」


「ストーカー?」


なんか最近聞いたなこんな話。


「出待ちされるのよ。

初対面で告白してくる軽薄な先輩とかは断れば終わりなのだけれど、足止めして中身のない話をしてきたり、どこに行くか観察してる人もいて、かなり困ってるわ」


「なるほどね。

それで?なんでそんな話を俺にするの?」


長くなりそうなのでカット。

市姫さんは平気そうだが、俺は暑い。

真夏の教室は地獄だ。

夏休みだからエアコンもついてない。

早く本題に入ってくれ。


「あら軽いわね。

可哀想だとは思わないの?」


「そりゃ思うけど、

同情して欲しくて呼んだわけじゃないでしょ?」


「まあ、そうね」


ため息をついて窓の外を見る市姫さん。

非常に様になっている。

ドラマのワンシーンみたいだ。


「武田くんには私の彼氏役になってほしいのよ」


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