落ちこぼれ魔法使いの魔法師活動 ~魔法が1つしか使えないけど最高の仲間と活動する~

冷凍ピザ

第1話 魔法のある世界

西暦2263年、この世界で初めて魔法が観測された。


 その後、世界中の研究者が魔法についての研究を始め、西暦2373年となった今は誰もが魔法を使えるようになった、才能さえあればの話だが。


 桐ケ谷神威きりがやかむい23歳は魔法が使えないわけでは無いがはっきり言って落ちこぼれの部類だろう。


 この世界の人間は皆、魂に魔法を宿して産まれてくる。

魂に魔方陣が刻まれているのだ。


 それは天から賜った魔法、天賜魔法てんしまほうと呼ばれている。

炎を出したり、時間を操ったりと色々だ。


 そんな中で神威が持って産まれたのは光属性魔法、属性魔法に分類される魔法だ。

属性魔法とは火、水、氷、自然、風、電気、光、闇の属性に分類される魔法の総称だ。


 特段この魔法が弱いとかそういうわけでは無いのだが、問題は他にある。


 彼は天賜魔法以外の魔法が一切使えない。

魔法は後天的に技術として習得可能だが、基本的に誰でも使える無属性の魔法ですら彼には使えなかった。

これが彼が落ちこぼれである理由だ。


 しかし、彼は仲間には恵まれている。今は3人の仲間達と魔法師として活動している。


 魔法師とは魔法を使って事件を捜査したり、魔法を使う犯罪者と戦闘を行う仕事だ。

魔法師は公安直属の組織で、国にも正式にその存在が認められている。

魔法師を育成する大学なども存在しており、この班は全員同じ大学卒だ。


 魔法師は基本的に3~10人ほどの班で活動している。

班内の人間の天賜魔法によって捜査、戦闘などに役割が分けられている。

神威達の班は主に戦闘だ。

そして結構結果も出しているので、公安から任される任務も多かったりする。


「神威~、公安から任務が来たよ」

今、神威に話しかけてきた黄金色の髪を腰の辺りまで伸ばした明るい雰囲気の女性は葉月彩夏はづきあやか23歳。

中学時代からの仲で3人の中では一番関係が長い。幼馴染みという感じだろう。

ちょっとお調子者だが、人のことをよく見ていて、気遣いができる。


 彩夏は公安から届いた依頼の資料に目を通していた様だ。

神威もその資料を横から覗き込む。


 連続切り裂き殺人事件······最近よくニュースでもやっている。

主にこの街で起きていて、路地裏などの人通りの少ない場所で切り裂かれた死体が発見されている。

動機も、被害者と犯人との関係も不明という事件で警察の捜査はかなり難航している事件だ。

この事件とエルヴという小さな組織が関係しているということを公安が突き止めたようだ。


「この組織は結構厄介だな」

「神威もそう思うよね、私たちで組織壊滅させようよ」

「そうだな、萌花と彰はどうする?」

「私も賛成」

「別にこの任務、拒否する理由もねえしな」


 反応した白髪でショートヘア(ボブカット?)の女性は如月萌花きさらぎもか22歳(今年で23歳)。

萌花は大学に入ったばかりの時に神威がスカウトした。


 天賜魔法はまだ使えないようだ。天賜魔法は皆持っているが、実際に使えるのは6割程と言われている。彼女はその使えない方の4割なのだろう。


 神威が彼女をスカウトしたばかりの頃は口数が少なく、彼女の方から話しかけてくることは一切無かった。しかし、時間をかけて少しずつ打ち解けていくことで今では普通に会話してくれるようになった。


 もう一人の茶髪の男は涼風彰すずかぜあきら23歳、神威とは高校からの仲だ。

偶然、席替えで神威と席が隣になってから自然な流れで関係が構築されていって今に至る。

その性格故か、人命救助を最優先にして行動している。

根っからの善人なのだろう。


 「よし、じゃあ決定だな。俺たちの班はエルヴの壊滅を目標に動く」

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