私とミカちゃんと②

 テスト中、消しゴムを落とした。

 拾ったのはミカちゃんだった。

 私に手渡してくれたが、ミカちゃんは驚いた顔をして、さっと顔を伏せてしまう。

 なにかと思ったが分からず仕舞い。もしかして、私の顔が変だったのかな、と思った。

 その日の昼休み。私は相変わらず「つまらない」グループで話をしている。

 ミカちゃんはいいな。一人で、ぼーとしたり、本読んだり。

 じっと見ていたのがバレたのか、ミカちゃんはこちらを向いて首を傾げた。

 私は何も言えないので、ぱっとグループの女の子たちと顔を合わせ、見てませんでしたよ、と貫く。

 そんなミカちゃんと親しくなるのは、その日の放課後だった。

 忘れ物をした。

 教室に着いた。

 ミカちゃんがいた。

 なにか喋っていた。

 私は開いた扉の前で立ち、そんなミカちゃんを見ていた。

 そして笑った。

 カツンッ、ランドセルが扉に当たって音が鳴る。

 ミカちゃんは驚く様子も焦る様子なく、大きな瞳をこちらに向けて「なに?」と口にした。

 私は驚いた。ミカちゃんの声を初めて聞いた気になったからだ。

「わ。わすれもの」

「そう」

 ミカちゃんは、ふいと顔をそらして『なにもいないところ』に話しかけ始めた。

 私は急いでプリントを探し、ランドセルに入れて走りだそうとして、身体が止まる。

「ミ、ミカちゃん!ばいばい!」

 なぜか、私はミカちゃんの名前を呼んで教室を後にした。

 なぜだ。なぜだろう。わからないけれど、多分、私はミカちゃんのことが好きなんだと思う。

 明日、どうすれば、ううん、きっと今日と同じ「つまらない」グループで話す。

 それだけ。

 私は、ミカちゃんの何に惹かれたんだろう。わからないけど、ドキドキする。

 心臓が痛かった。

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