五分でダンジョンクリアしてラスボス倒せってちょっと無理ゲーだと思う件
はじめアキラ
五分でダンジョンクリアしてラスボス倒せってちょっと無理ゲーだと思う件
「急げ、あと五分しかないぞおおお!」
「うおおおおおおお!」
「ザコ敵うっぜええええ!」
どどどどど、と魔王の城に突撃していく勇者、約百人。俺もそのうちの一人である。
世界を脅かす魔王、その城が発見されたまではいい。
何が面倒くさいってこの魔王、城にとんでもないトラップを仕掛けてくれたのだ。おかげでちっとも攻略が進まない。先遣隊だった俺達が手こずっている間に、国の募集で集まった勇者達がどんどん押し寄せ、ついに百人にまで到達してしまったほどである。
そのトラップとは、即ち――城に入って五分したら強制的に城の外へぽーんと弾き出されてしまうトラップだ。
「ランダムエンカウントめんどくせ!虫系モンスターわらわら出てくるなああ!」
「先輩、ドア開きません!なんかそのへんにスイッチありませんか!?」
「ぎゃあああドア遠ざかる!この床滑るうううう!」
「踏んだら勝手に違うフロアに飛ばされる系トラップとかやめてもらえませんか迷子の天敵なんですけどどどどど」
ザコ敵の強さは、はっきり言って大したことない。
しかし何が面倒かって、城の一階から十階までトラップがぎっしりあって、魔王が最上階にしっかり引きこもってしまっていることである。一階から十階まで、わんさか無駄に多いザコ敵の相手をするだけで面倒くさいのに、1フロアごとに全部トラップを解除していかなければいけないとかやっかいすぎるのだ。
そうこうしているうちに、五分が経過。
「うわあああんまた失敗かよおおお!」
俺達はぽいぽいぽーい、と城の外に弾き出された。魔王の城の庭には、同じようにぽいぽいされた勇者達が衝撃で目を回して転がっている。
はっきり言って、これでは埒があかない。
早く魔王を倒さなければ世界征服されて、男も女も老人も赤ん坊も関係なく公式コスチュームが超絶ミニスカートにされてしまう!
可愛くて若い女の子の超絶ミニスカートは実にグッジョブだと思うが、それ以外がきっつい!ていうか筋肉もりもりの大男である俺がそうなるのも死ぬほどきっつい!
「はっはっは!これでも私を止められる者はおらーん!」
魔王は最上階から、わざわざスピーカー持ち出してきて高笑いしている。あの、遠くてサイズ豆粒すぎて、顔も見えないんですけど。
「私の全人類ミニスカート計画は揺るぎない!大人しく諦めろ勇者ども!」
「うるせー!引きこもりのチキン魔王のくせに!」
とにかく、五分で強制ログアウトさせられてしまうトラップをどうにかしない限り、ダンジョンクリアも魔王討伐も夢のまた夢だ。
と、ふと俺は気づいた。そういえばあの魔王、俺達が城を包囲してから十日は引きこもったままなのだが。その間、食料とかどうしているんだろうか。部下があれだけいるなら、かなり備蓄の消費は早いはずなのだが。
「……そういえば、魔王がミニスカート萌えを発動した理由って。アイドルグループの“ぴちぴち・エンジェル☆”にドハマリしたからでしたよね」
勇者の一人がぼそりと呟いた。その一言に、俺達は顔を見合わせる。
もしや。
「……これ。ダンジョン攻略する必要、なくね?」
***
「お、お前らあああ!この卑怯ものおおお!」
「お前が言うなアホ!」
後日。
“ぴちぴち・エンジェル!”が近くの町でイベントをやるという広告が出回り。食料の買い出しもかねてのこのこ城の外に誘い出され、百人に袋叩きにされた可哀想な魔王の姿が。
簀巻きにされ、びったんびったんと魚のように跳ねながら魔王が叫ぶ。
「この縄を解け、解くなら……ミニスカートは十代と二十代の可愛い女子限定にすることで妥協するからあ!」
「な、なにっ!?」
その瞬間。思わず心がグラグラッとした俺達男性勇者達もまた、その場にいた女性勇者達にタコ殴りにされたのは言うまでもない。
五分でダンジョンクリアしてラスボス倒せってちょっと無理ゲーだと思う件 はじめアキラ @last_eden
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます