そのろく。農家の洗礼
農作業とは天候と己との闘い。春といえどもビニールハウスの中は温室なのでぬっくぬく。べらぼうに暑い。扇風機がついた空調服がないと干からびてしまう。冗談ではなく。そしてタイヤのついた小さな椅子に座り、腰を屈めて一つ一つ作業をする。ひたすら葉っぱをむしる、ひたすら紐に巻きつける、こういった作業が本当にキツイ。ビニールハウスが75メートルもあるのでとにかく終わりが見えない。暑さとキツさでメンタルもやられてしまう。一人ずつ列を担当するため、喋ることもない。エンドレス無の時間。
「みんなの食を支える…素晴らしい仕事じゃないか!」なんて気持ちは一週間で消えていき、「帰りたい…オラこんなとこ嫌だ…」とすっかり意気消沈していた。一方の夫は常にニコニコしており、私とは反比例。綺麗なグラフを描いている。「看護師より向いてるし楽しいよ〜」じゃないよ。お前にわしが救えるか。研修医を片っ端から食い尽くす看護師や盗撮する医者をネタに飲み会をしていたあの頃が恋しい。
冷えきった私の心を暖めてくれるのはトイレットの便座だけだった。
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