第2話 三島 将生

 僕は三島 将生。父親は自ら立ち上げた会社の社長をしていて、子供の頃からお金に困ったことはない。将来、会社経営を引き継ぐために、日本じゃなくてアメリカの大学で経営学を学んでこいと言われ、大学はハーバードに行った。


 大学では、日本より授業についていくのが大変で苦労したけど、自分の部屋にしょっちゅう、いろいろな女を呼んで、毎朝起きると、横にどこかの女が寝てるという生活を送っていた。


 アメリカから帰ってきて、まず、社会勉強をしろと父親から言われ、一番いいオファーを出した丸菱商事に入った。そこでは、もちろん数々の成果を出したが、父親から、リーダーとなるためには嫌われてはだめで、人から尊敬され、慕われることが重要だと言われていた。だから、つとめて、人にはやわらかく接した。


 もちろん、いい人というだけでは、リーダーになれない。僕に人が集まってくるように、慕われつつ、手懐けていかなければならない。僕は必死に、試行錯誤をして、時には、悪どいと言われるようなことにも手をつけて人身掌握に努めた。


 その結果、誰からも、あの人は、将来、この会社の社長になると噂されている。まあ、僕の実力を持ってすれば、当然のことなんだよな。父親の会社を継ぐのもいいけど、この会社の社長になって、親の会社と対等合併すれば、父親を超えられるじゃないか。


 ある日、同僚から製薬会社の秘書室の女性とグループ飲み会合をしようと誘われ、そこで、知り合ったのが莉緒だった。莉緒は、顔やスタイルはどこにでもいそうな女、というより、平均以下で、魅了が全くないといっていい女だった。


 でも、積極的にアプローチしてきて、すぐに寝れそうな都合がいい女だった。今は彼女はいないし、飽きればいつでも捨てればいい。もちろん、そんなことは本人に言わずに付き合い始めた。何よりも、俺に文句を言いそうにもないところがいい。


 しばらく、付き合ったが、男性と付き合ったことがないのか、何も知らない女だった。若い子に教えてあげるのが楽しいということも聞くが、あんなに何も知らないのも困る。キスをしたら、泣きそうになって喜んでいた。僕に、ベタ惚れって顔に出てる。


 こちらがリードするんだけど、恋には駆け引きっていうものもあるだろう。いつも、待ちの状態で、自分から手を握ろうともしないし、ほとんど自分の話しもせずに、下を見て、ずっと恥ずかしそうにしている。なんか疲れる。


 ただ、その後、ホテルに誘ってエッチもしたが、体は感度も良く、見た目よりは、それほど悪い感じでもなかった。ただ、最初の時は泣いていて、痛かったのかいと聞いたら、嬉しかったのとワーワー泣かれたのはびっくりしたが。


 神戸に一緒に旅行したが、セックスフレンドとしては都合も良かったので、1人エッチするよりはマシかと思い、週に1回ぐらい呼び出して、夜を一緒に過ごした。


 ただ、こんな女を連れて歩くのは僕の格が落ちるので恥ずかしい。本当は、ホテルで待ち合わせをして、ホテルで別れるなんていうのが理想だった。でも、流石に、そこまですると人でなしと言われそうだ。


 そんなことを思っている時に、モーターショーにいたコンパニオンの中で、芸能人バリの美貌と抜群のスタイルの女を見つけた。


 その子を誘ったら、すぐ着いてきて、夜の渋谷とかを連れ回し、よく飲みに行った。彼女を連れて歩くと、誰もが彼女に振り返るぐらい美しい。その後、道玄坂のラブホに行くのがお決まりで、朝帰りの日が多くなった。


 その子とのエッチは、いつも大袈裟で、体操でもしてるんじゃないかって感じだったが、まあ、アクセサリーのように、外を歩いていて自慢できるっていうだけでも価値はあった。


 その分、莉緒と会う回数は減ったが、別れる積極的理由もなかったので、関係は続けていた。莉緒は、適当に褒めておけば嬉しそうにしている。


 お互いに出会うのは避けたかったので、莉緒はその住まいに近い六本木、コンパニオンの子はその住まいに近い渋谷とエリアを絞って、会わないように気をつけていた。


 でも、コンパニオンの子は、日常生活では、ガサツというか、この前、その子の部屋に行ったら、ゴミ屋敷のようで、一緒に暮らすのは無理だと思ったんだ。どうして、完璧な女はいないのか。


 でも半年ぐらい前、桜井 早希という子と知り合った。歯科衛生士をしていて、歯医者からの帰りに、エレベーターで偶然一緒になり、話しが盛り上がった。歯医者には男は先生一人だけで、男と知り合う機会が少ないとか言っていたが、清楚という言葉がぴったりの子だった。


 その子は、顔も芸能人だと言っても言い過ぎでないぐらい可愛くて、いつも楽しそうにケラケラと笑い、何を言っても笑顔で聞いてくれた。スタイルも抜群だったが、どちらかというと引っ込み思案で、家から積極的に出るタイプではない。


 男性があまりいない世界には、このような素晴らしい女がいるもんなんだな。また、そういう環境だからこそ、男性から手をつけられることもなく、汚れずに清純のままでいられるんだ。理想じゃないか。


 1ヶ月ぐらい付き合った頃、家まで送って行ったら、大雨が降ってきて、早希の方から雨もすごいし、少し、部屋で休んでいったらと誘われたので、これはラッキーと思い、初めて早希の部屋に入った。


 何もない部屋だけど、とても清潔で、早希の性格そのもののように感じた。ワインがあると言われたので、そこで飲み直すことにした。ワインも数日に分けて飲むなんて、なんと質素な生活をしているんだ。そんな早希を今まで以上に愛おしく思った。


 そのうち、早希はだいぶ酔っ払ったようで、歩いている時にベットに倒れてしまった。大丈夫かと駆け寄ると、大丈夫と言って、僕の肩に手をかけて立ちあがろうとした。僕は、酔ったふりをして早希に初めてのキスをした。そして、初めての一緒の夜を過ごした。


 早希は、エッチをした時も上品だった。体の毛も綺麗に手入れされていて、いやらしさは全くない。また、あまり乱れることもなく、そうはいっても、愛してるという気持ちが伝わるように、僕を受け入れてくれた。


 終わった後、本当に幸せで、ずっと愛していたいという顔で僕を見てくれたのは、今でも忘れることができない。こんなエッチは初めてだ。莉緒とは全く違う。


 早希は、声もとても清純という感じで、エッチの時も含めていやらしさというものが全くない。話しを聞いているだけで、ずっと一緒にいたいという心地よさがある。


 僕は、早希に夢中になり、週の半分以上は、早希の部屋に行って夕食を共にした。そして、莉緒とは別れることを決心した。


 そこで、彼女に別れを言い出すために、大切な話しがあると言ってレストランに誘ったが、レストランで大泣きされるのも困るなとか思っているうちに、言うタイミングを逃してしまった。


 何も話し出さないのを不審に思ったのだと思う。莉緒からホテルに泊まろうよと言われ、今出たばかりのレストランがあるホテルの1室を予約した。部屋で、話そうかと思ったが、もう1時は過ぎていて、ここで、大喧嘩になっても朝までもたないので、言い出せなかった。


 さすがに、もう莉緒と寝る気にはなれなかったので、疲れたと言って寝ることにした。そして、次の朝、莉緒をおいて、早めにホテルを出た。


 朝、莉緒と別れ会社に向かったが、途中で自転車に乗った老人が倒れてしまい、自宅まで届けたりしていて、かなり時間を使ってしまった。ちょっとボケていたから、俺のこと忘れちゃうかもな。別にお礼とかいらないけど。


 それから会社に向かったので、会社には遅刻になってしまったが、成果だけ出していれば、遅刻とかを責められない会社だったので問題はない。


 お昼にスマホを見ると、莉緒からメッセージが来ていたが、なんか見る気が起きずに放置してしまった。

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