第2話 信じてもらえない苦悩

 今日は2回目の接見ということで、前回に話しを聞いてくれた先生が目の前にいる。この先生に、どうしたら、本当のことを信じてもらえるのだろう。確かに、パラレルワールドとか、魔法とか言っても、頭がおかしいと思うわよね。


 でも、それが真実だし、それ以上の説明ができない。この先生に納得してもらえないと、私は本当に人を殺害した人になってしまう。私は、とても厳しい瀬戸際にいるの。どうしよう。


 そういえば、嘘発見機があるとか聞いたことがある。私は殺害したことを知らないということを証明できないのかしら?


「嘘発見機とかあるんですよね。私が殺害について、何も知らないと証明できませんか?」

「それはいいアイディアとは思うのですが、二重人格者は、もう一人の行ったことを知らないこともあり、そういう状態なら、あなたが殺害していないという証拠にはならないと思います。」

「そうなんだ。どうすればいいだろう?」

「あなたは精神病で、自分でコントロールできない状況だったと言えれば、少しは刑は軽減できるかもしれませんね。」

「私は、何もしてないんだし、そういうことじゃないと思う。」


 どうしたら、私のことをわかってくれるんだろう。私は、このまま殺人者として生きるしかないかもしれない。この先生は、私の味方だと思う。でも、その味方も、信じられないと言われちゃうと、私がやっていないと信じてくれる人がいるとは思えない。


「私は、何もしていない。被害者なんだから。」


 私は、大声で叫んでいた。異常者のように。今日は、生理が今夜にもくるからか、精神が不安定で、感情が爆発してしまったの。こんな姿を見せたら、私の味方の先生も、私のことを見放してしまうかもと思ったけど、自分を抑えられなかった。


 どうしよう。私は、誰も信じてもらえず、孤独の時間を過ごすことになったの。もう、だめ。そりゃ、魔法とかいっても、誰も信じてもらえないわよね。


 そんな日々が続き、どんどん暗くなって、生理が終わっても、この気持ちは回復することはできなかった。いつもなら、明るくなれるのに。


 私は、誰とも話す気になれなかった。先生も、私のことは分かってくれない。そういえば、私のこと分かってくれる人は、この世にいるの?


 同期の彼、歯医者、サッカー選手、私のこと愛してくれた。でも、今は、みんな私のことを捨てた。それって、私は、付き合うに値しない人ってことね。


 そういえば、私って、何も取り柄がない人だった。こんな私って、愛される価値がないのよ。殺人とか言われる前に、人間として生きる価値がないんだから。


 それなのに、男性と付き合えただけでも幸せなこと。そんな経験はできたんだから、私は、これ以上、生きる価値がないのよ。


 私は、もう誰とも話す気力はなくなっていた。先生が来ても、もう話しても無理だと思い、先生の顔を見ることもなくなった。


 外では、今はシャクナゲとか、咲き誇っているんだろうね。でも、私は、そんな姿は見えない。だって、私は、みんなから嫌われて、刑務所にいるんだから。死刑が待ってるかも。


 もう、どうでも良くなった。だって、何をやっても、誰も、私のこと信じてくれないんだから。もう、どうでもいいの。このまま消えていくのが、みんなのためかも。


 そう、私は、生まれた時から、みんなから嫌われていたの。それにもかかわらず、今まで生きていたのが間違いなのよ。


 お父さん。お母さん。どうして、私を産んだの。こんなに罪の深い私を。私も苦しかったの。生まれて、みんなに迷惑をかけて、こんなに生きてしまった。早く死ぬべきだったのに。


 でも、そうじゃない。ごめんなさい。こんな子を産もうと思ってなかったね。こんな人になってしまった私が悪いの。私のせい。本当にごめんなさい。


 次の朝、刑務官は、私が食事の時に盗んだフォークで首を刺して自殺している姿を見つけた。

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