第6話 真犯人
刑事が1回来ただけで、それ以降は、全く来なくなったわね。多分、事故として処理されたんだと思う。これで、美花の仇は打ったし、終わりね。
ただ、その後、その刑事が再びやってきてびっくりした。その刑事も、あなただったんですかとびっくりしながらも、美花が殺害された犯人が見つかったと報告したの。
犯人は、美花の高校時代の同じクラスメートだった女性だと言うじゃない。そんなことはあり得ないわ。この前、私は犯人を殺したんだから。
刑事によると、その女性は、美花にお金を300万円貸していて、全く返す気がない美花に怒りを感じて、刺したと自供したらしい。また、美花は、大学2年の時に、返すあてもなくお金を借りて、そのお金で顔やバストを整形をしたんだって。
本当なの? 美花はそんなことをする子じゃない。とっても心が綺麗な子なのよ。でも、美花の親も整形について認め、お金のせいで殺されたって泣いていたらしい。
「刑事さん、教えてくれて、ありがとう。でも、その女性、どうして大学生で300万円も持っていたんですか?」
「こんなこと言っちゃまずいんですが、ここだけですよ。その女性、パパ活やっていたようで、嫌なことを我慢して稼いだ金が奪われたって、激怒していたらしいです。」
もしかしたら、私は、美花のこと、何もわかっていなかったかもしれない。私と付き合うために整形したのかもしれない。どうだったんだろう?
どうであろうと、私たちは愛し合っていた。それに間違いはない。そのために美花が整形したとしても、それがどうだっていうの。別に、私は美花の顔が好きで付き合ったんじゃなくて、心が好きだったんだし。
お金だって、おじさん達から巻き上げた汚い金で、この女性のお金じゃないから返す必要はないと思ったのかもしれない。きっと、そう。美花が人のお金を騙し取るはずがないもの。
でも、私は、男性が美花をつけて行くのをみた。冬だったから、コート着ていて分からなかった? フードかぶっていたし。そう言われると、よく分からない。女性ということを隠し、変装していたかもしれない。
じゃあ、私は、美花と関係ない人を殺したっていうこと。とんでもないことをしてしまったかもしれない。
「そうなんですか。友達が殺されたショックはまだ残っていますが、そういうことだったんですね。わざわざ、ご連絡いただき、本当にありがとうございます。では。」
「また、何かお伺いに来るかもしれません。そのときは、よろしくお願いします。」
俺は、別々の事件の関係者で、同じ人に出会ったのはこれが初めてだ。話しとしては、全く関係ないし、疑うところもないが、これは偶然だろうか? 友達が目の前で殺され、その犯人が分かって動揺するのは当然だ。でも、表情を見ると、何か違う気がする。
何が違うんだろう。そう、普通はショックで頭の中が真っ白という感じだが、この人は、何か、ずっと考えている。何か不利になることでもあるのだろうか?
先日、事故死した南 光一と、殺害された女性の桜井 美花との関係を探したが、何も出てこなかった。というより、今、前にいる河合 沙羅という女性が唯一の関係だ。それがなんなんだろうか?
そういえば、最初、被害者が殺されたとき、河合は男性がストーカーしていたと証言していた。そして、今回、犯人は女性だと伝えた時、驚いた顔だったが、男性じゃなかったのかとは聞かなかった。普通、聞くんじゃないのか?
いや、殺しは男性がやったという先入観で、冬の服装を着る女性を男性と勘違いしたかもしれないと思ったのかもしれない。でも、そうすると、事故死した南はどこで出てくるのか?
気になって、調べてみると、2人が飲んでいたという居酒屋の店主が、河合が来た時は、混んでいたが、2つぐらい席は空いていたと証言をした。そんな状況で、女性がわざわざ男性1人客のところに相席を求めに行くか? やっぱり怪しい。
そして、更に調べると、南が、桜井殺害の翌日に仙台の実家に戻ったこと、更に、居酒屋で、河合にそのことを話していたことがわかった。やっぱり、何か桜井の殺害事件と南とは関係があるんじゃないか?
どう調べても、南と河合との関係はわからなった。ただ、居酒屋では、河合が先に出たのに、南の自宅の近くで、南の後ろを歩いているところが監視カメラに写っていることがわかったんだ。
そして、それから15分ぐらい後、同じ監視カメラに、河合が逆方向に走っていくところも写っていた。そこで、河合を任意同行して、取り調べが始まった。
「あなたは、居酒屋で一緒に飲んだ南の自宅近辺で、南の後ろを追いかけている写真が出てきましたが、何をしていたんですか?」
「少し、酔ったのか、暗かったこともあって、道に迷ってしまって、その近辺をうろうろしちゃったんですよ。お恥ずかしいです。」
「その後、走っているところも撮影されています。酔っ払ったにしては、しっかりと走っているように見えますが。」
「酔っ払っていて、よく覚えていないんですよね。私、走っていましたか?」
「酔っ払っていて、よく覚えていないということだと、人を殺害したことをも覚えていないということになりませんか? どうして殺害していないと断言しているんですか?」
「私が殺害したことにしたいんですか。なんか、気分が悪いですね。でも、そんな酔っ払った人が男性を殺せますか? ニュースでは、階段から落ちた事故とか聞きましたけど。」
「階段の上からなら、女性の力でも男性を落とせるんですよ。」
「いずれにしても、殺していません。」
それ以上、何も出てこなかったので、疑惑は非常に濃いが、解放するしかなかった。そして、俺は定年となり、この女も逮捕できずに、南については、事故による死亡のままとせざるを得なかった。
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