第4話 死体
私があの女を埋めた山中から死体が発見されたというニュースが流れた。焼かれていて、白骨化した死体だったけど、20代の女性のもので、おそらく2年ぐらい前に埋められたのだろうということが警察の調べで分かったらしい。
白骨化遺体は、近くの木陰から沙奈という女性の学生証が出てきて、その女性の遺体だろうということで捜査は進んだみたい。
警察の調べでは、沙奈は4年の冬から学校に出ていないということがわかった。そして、その父親に連絡したところ、やっぱり殺されていたじゃないかと警察に怒鳴ったんだって。でも、娘が亡くなっていたってわかって、その場に泣き崩れてしまったらしい。
お父さん、ごめんなさい。でも、私は生きているから、そんなに気を落とさないでね。
歯型もチェックされたけど、特に治療した跡はなく、沙奈も同じだったので、死体は沙奈のものだろうという結論は変わらなかった。
でも、遺伝子検査はされなくてよかったわ。2年ぐらいだと、家のどこかに落ちてる髪の毛とかを調べれば、沙奈じゃないって分かったと思う。やっぱり、直感で学生証を置いたんだけど、それは正解だった。学生証を置いたのが犯人だったなんて、普通は考えないものね。
捜査が進む中で、殺された頃に、沙奈がレンタカーを借りたこと、そして、監視カメラで、死体がある山の近くまで沙奈が運転していたことが分かった。
そこで、この山奥に埋められていたんだろうとされた。また、この近辺で監視カメラで確認された夜11時以降に殺され、それから穴を掘って、燃やされ、2時までには埋められたのだろうとされた。レンタカーは朝4時ごろにお店に返却されていたからだ。
さらに、死亡したと思われる直前に、5,000万円もあった預金が全て引き下ろされていたことが分かった。何か脅迫されたんじゃないか、金目当ての殺人だろうということで捜査が進んだんだって。
「脅迫の現金の受け渡し場所として山奥が選ばれたんだろう。周りに人がいないし、殺してもわからない。こんな深い穴を掘って埋めたのだとすると、時間的にいっても男性じゃないと無理だな。複数犯かもしれない。」
「レンタカーが、ここから夜中にレンタカー店の前に返されていた。翌日までのレンタルだったけど、電話で、お返ししますって女性の声で連絡があり、朝に店員が確認したらキーもあって、追加料金もなかったから、お店も問題視していなかったらしい。その女性って誰だ。協力者かもしれない。」
そんな議論の結果、男女2人共犯の脅迫と殺人、死体遺棄ということで捜査が進められた。まず、最初に疑われたのは一香だった。沙奈が大学の廊下で一香をすごい形相で睨んでたという証言があったから、一香がその女性を脅迫していたんじゃないかということだった。
でも、話しを聞いていくと、一方的に一香が嫌われていただけで、一香は沙奈を知らなかった可能性が高いことが分かった。経歴から見ても、同じ大学だということだけで、それ以上の接点は見つけられなかった。
また、一香の話しを聞いても、その女性のことは知らないと一点張りだった。その言葉には迷いはなく、取り調べている刑事も、本当だとしか思えないと言っていた。一香が仲良くしている隆一も、沙奈のことは知らないと言うだけで、共犯になる動機が見当たらなかった。
捜査は難航し、結局、犯人はわからずじまいで、捜査チームは解散することになった。
しばらくして、刑事も来なくなり、捜査は終わったんだと一香は思った。やっぱり、正義は私にあるのよって、ニヤリと笑った。
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