第3話 性転換手術

「あなたが男性だった? 意味が、よく分からないんですけど。刑務官からは、あなたは毎月、生理もあると聞いていますよ。」

「よく調べているわね。でも、私は、中学3年の時に性転換手術を受けて、男性から女性に変わったのよ。ただ、切って形を整えるということじゃなくて、子宮を体に入れて、性器もそのまま移植したのよ。でも、そんなこと知らないわよね。戸籍も女性に変えたし。」


 あまりに滑稽な話しだが、DNA鑑定の件もあり、本当なのかもしれない。もしかしたら、ここまで罪悪感がないのは、男性の凶暴性が残っているとか、男性と女性の遺伝子が交わることで感情が変化したのかもしれない。


「そんなことができるとは初耳でした。」

「驚いたでしょ。そして、その後はずっと女子校で、あまり男性と会える機会がなかったから、彼が初めて付き合った人だったの。」

「初恋みたいですね。ところで、顔を整形しただけで、彼の前で一香さんに成り代わるなんて無理だと思うんですけど、どうやったんですか。だって、彼女のことなんだから、話しが合わないとか、違う人だとすぐにわかると思うのですが。」

「1年ぐらい、ずっと2人を後ろから見ていたわ。今日は、どこに出かけたんだろう、何を話してるんだろうって。だから、大体、隆一と一香の間で何があったかは本人たちと同じぐらい知っているのよ。」


 自然にストーカーができるのは、その頃から普通じゃない。その頃から殺害を計画していたのだろうか。殺人を考えている人が、暗い中、ずっと後ろからついてくる、そんな光景にゾッとした。


「そうだとすると、彼が一香さんと仲良くしているのを見るのは嫌だったでしょう。」

「そうでもなかったわ。2人の写真を撮って、一香の顔を私の顔に入れ替えたフォトスタンド見た? あの、隆一が捕まった証拠になったやつ。あの写真見て、私は隆一と一緒にデートしている気分だったから、楽しかったかな。」

「あの写真は、そうやって作ったんですね。そうすると、彼は、紗奈さんのこと、会ったこともないし、話したこともないし、本当に全く知らないんですね。裁判では、彼が紗奈さんと付き合っていた証拠がその写真だった。でも、沙奈さんと別れたくて、一香さんと一緒に殺したという結論でした。あなたの話しだと、あなたが一香さんになりすますために、1人で殺害したということだったんですか。」

「そう言っているじゃない。警察にも、そう言ったけど、信じてくれなかったのよ。本当に、隆一は冤罪でかわいそう。」

「私から、警察には言っておきますね。でも、彼には、あなたが紗奈さんだと伝わりますが、いいですよね。」

「彼が釈放されるんだったら、仕方がないわね。もう、付き合うこともないと思うし。彼には、本当に幸せな時間をくれて、感謝しているって伝えておいて。」


 彼には、少しは穏やかな気持ちもあるみたいだ。彼のことから心を解きほぐしていくのがいいかもしれない。

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