第137話 嘘は言っていない
そして俺は渋々フィリアを奴隷にするのであった。
◆フィリアside
ハッキリ言って賭けではあった。
まさか断られるとは思っておらずそのまますんなりと奴隷契約兼婚約を了承してくれるものと信じて疑わなかった私は、未来の旦那様であるルーカス様に奴隷契約も婚約すらも断られた瞬間に足元から世界が崩壊していくような錯覚を覚え、そして想像してしまう。
このまま私に相応しい結婚相手が見つからず年老いていく未来か、老人の介護要員として嫁がされる未来を。
流石に死ぬ間際の老人ではなく、まだ性欲もあり子作りも可能であるオジサン程度の年齢が相手を、私の親は婚姻相手にあてがって来るだろうが、そんなもの現時点では大丈夫なだけで同年代と結婚して同じように年老いていくのと違い、相手の方が何十年も早く年老いていくのだ。
そんなもの現時点では介護が必要ではないだけで『近い将来介護も視野に入れた婚姻』というだけではないか。
そんな未来であるのならば、私は家族と縁を切り冒険者として生きつつ私よりも強い雄を探す旅に出てやると本気で考えてしまう。
そして、どの選択肢も私は選びたくないからこそ今回は必死だったのだ。
先にルーカス様へ奴隷契約は勿論、婚約の話を持って行ったとしても断られる事は目に見えていたので、ルーカス様に気付かれないように外堀を埋めていったのだ。
流石にここまで事前に逃げられないようにしておけばいくらルーカス様であろうとも大人しく私を奴隷兼婚約者にしてくれるだろうと、そう思っていたのだが、ルーカス様はそんな事は所詮小細工でしかないと、ならば自分の力で未来を切り開いていくだけだと、今回の話を一蹴してしまうではないか。
正直な話、惚れ直したと言っても良い。
それと同時に諦めたくないと強く思った。
しかしながら私はもうやるべきことは全てして来た。他に手札も何もない……本当にそうなのか?
泥臭くても良い。ここまでやったのだ。今さら卑怯な手段だなんだと選り好みできる資格も無い。
とりあえず、ルーカス様は自身の能力を隠したがっているように思ったので、あの日私はルドルフとルーカス様の決闘の場所にいたと話してみる。
嘘は言っていない。
確かに私は『遅れて』あの場に行ったのだから。
こんな、子供でも分かりそうな手段、ルーカス様が引っかかる訳がないと思っていたのだが、その効果は絶大であったようで、先ほどまでの流れが嘘のようにあれよあれよと私を奴隷兼婚約者にする方向へ話が決まっていくではないか。
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