第107話 バカなのであろう
しかしながらそこは腐っても元冒険者ランクS。
魔術段位三程度の魔術であれば、例え無詠唱かつ不可視の攻撃であったとしても簡単に防いで見せるではないか。
大口を叩くだけの実力はあるという事が分かって、私は少しばかりワクワクしてくる。
やはりご主人様から教えていただいた様々な魔術や武術、そして貸していただいているアイテムは実戦で使いたくて日々うずうずしているのだ。
その数少ないチャンスが来たと思うと、ワクワクしない方がおかしいというものである。
「おいおい、まさかこの程度の魔術を無詠唱で行使できるから俺に対してそんなに偉そうな態度を取れているとか言うんじゃないだろうな。確かに【鎌鼬】は風魔術である為目視する事はできず、そんな魔術を無詠唱で行使できるというのは、並みの冒険者が相手であれば通用するのかも知れないが、しょせんこんなものは初見殺しでしかいない。そもそも例え無詠唱であろうが不可視であろうが、相手の魔術の流れをしっかりと見ていれば無詠唱で不意打ちをされても、その前に魔術の流れから魔術を行使しているという事が理解できるし、その応用ちゃんと魔力の流れを見ていれば【鎌鼬】の場合、魔力に帯びた攻撃を見るという事もできるんだよ。だから冒険者Sランクにそんな子供だましのような攻撃が通用する訳がないだろう?」
そして、私の攻撃を防げた事がよほど嬉しいのか、どうやってわたしの攻撃を防いだのかという事をペラペラと話し始めるではないか。
恐らく相手はこの『無詠唱で【鎌鼬】を行使する事が私の切り札である』と勘違いしているのだろうが、例えそうであったとしても自分の手の内をべらべらと話すのは流石に馬鹿なのではないかと思ってしまう。
これが、相手と自分との力量の差がそれだけ開き切っている場合は全然やっても良いとは思う。
しかしながらコイツの場合は確かに圧倒的にお互いの力量に差があるのだが、それはコイツよりも私の方が強いという事であり、私がこいつよりも劣っているのではなくて、コイツが私よりも劣っているだけである。
そんな事も気付けないような者が、冒険者ランクSというのは流石に笑い話にもならない程に、バカなのであろう。
「うん? どうした? 絶望して固まってしまったのか?」
「ええそうね。あなたの頭があまりにもバカ過ぎて、その衝撃で固まってしまっていたようね。いつどこで私が『無詠唱で行使しする【鎌鼬】が私の切り札』だと言ったのかしら?」
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