第85話 不思議で仕方がない

「このオークとトロールの力をノーマンでも使えるようになれば、規格外のパワーと再生力を得る事ができるかと思ったんですけどねぇ……どちらか一つしかできないのか、そもそもこの娘が適応していなかったのか、どちらか片方の細胞が悪さをしている為、魔物や魔獣の種類を変えると成功するのか……。この症状はお互いの細胞が体内に取り込まれた結果副作用で肉体が崩れていっているけれども、トロールの再生力で何とか現状を保てている感じかしら?」


 当然、実験が成功するのは嬉しい。


 けれどもこうやっていろいろと実験結果から考察して正解を導いていくのもまた面白く、その分だけ実験が成功した時の嬉しさも倍増という訳である。


「あぁぁああぁぁぁああ……っ」


 そして、化け物と成り下がったゴミが、私に何かを訴えかけるように話しかけてくるも、何を話そうとしているのか聞き取れなければ、聞き取ろうとも思わない。


 ゴミが何か言ったところでそれが何だというのか。


 そもそも、せめて使えるレベルにまで保てていれば、攻撃用または逃げる為の肉の壁用として使えたというのに。


 隷属魔術を施すのもそこそこ面倒くさいという事をこいつは知っているのだろうか?


「あ? 何を言っているのか分からないわね。 そもそもあなた、身体が腐っていて臭いのよさっきから。しかも口を開いたら腐った魚のような臭いも部屋の中に充満するし……って、何泣いているのよ? こっちは実験は失敗しているしあなたの臭いが強烈だわで、泣きたいのはこっちなのよ?」


 まったく、人に散々迷惑をかけておいて、最終的に泣き始めるとか子供でもあるまいし……。


 こういうバカを相手にすると腹が立って仕方がない。


 まぁでも、言葉を喋れないだけまだマシだろう。と私は思う事にして、臭いもきつい為さっさと次の部屋へと移動する。


 そこには背の低い檻が上に三弾重ねて置かれ、その中には先ほどのゴミとは違いノーマンの細胞を入れた魔獣が鎖に繋がれた状態で檻の中で大人しく待機している個体や、私を見た瞬間暴れ出す個体、ノーマンの細胞が合わずに身体が崩れ始め死にかけている個体など、各々違った反応をしている。


 同じ種類の魔獣であっても反応が違ったり、違う種類の魔獣でも反応が似ていたり、与えたノーマンの細胞も同じノーマンだろうと違うノーマンだろうと、生きたノーマンの細胞だろうと、死んだノーマンの細胞だろうと、どのような組み合わせにしても決して同じような結果にならないのだから不思議で仕方がない。

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