第60話 コイツの家の方がヤバい


「婚約者選びは、学園に入学する前から始まっておりますのよ?」

「その時点で貴女たちは婚約者選びの何たるかを知らないようですので一度出直してきたらよろしいのでは?」


 相手の方へ流れて行った女生徒達を、俺のところで留まっている女生徒達が侮蔑交じりの視線と共に辛辣な言葉を投げかけるではないか。


 そのオーラは正に歴戦の狩人そのものである。


「あら、今更ルーカス様の事を『貧乏』というだけでお捨てになられたあなた方が、今更こちら側に何で戻れるとでも思っているのかしら?」

「恥を知りなさい」


 そして、彼女達の話を聞いて俺の元へと戻ってこようとする女生徒達を全てシャットアウトしてくれるではないか。


 それはそれで嬉しいのだが、見方を変えると『強者だけが俺の元に残った』という結果に少しばかり胃がキリキリとしだす。


「そもそも貴方、ルーカス様に噛みついているのだけれども確かルドルフの家であるアブスブルゴ家は借金まみれでそろそろ没落するのでは? という噂もあるのですが、それは身の丈に合わない豪遊をしているからではなくて?」

「はっ!? そんな訳ないだろうっ!! そもそも女であるお前たちに何が分かると言うんだっ!!」

「あら? そうであるのならば良いのですが……」


 そして、どうやら俺に突っかかって来た者はルドルフ・アブスブルゴという者らしく、むしろコイツの家の方がヤバい事になっているらしい。


「そうだな。ルドルフだっけ? 君がそう言うのならばきっとそうなのだろう。俺の家は貧乏で君の家は金持ち。それで良いではないか。これ以上突っかかってくるというのであれば流石にこちらもそれ相応の対応をさせてもらうが? 例えば担任教師へとチクるのも良いだろうし、俺の家から直接君の家に抗議しても良いが?」

「…………ぐぬっ。そ、それがどうしたっ!? そんな脅しに……ひっ!? …………きょ、今日の所はこれくらいにしといてやるっ!!」


 とりあえずこれ以上は流石の俺も面倒くさいのでここで終わりにしないかと持ち掛けるのだが、ルドルフは納得していないようで更に突っかかってこようとするのだが、何故か恐怖に染まった表情をしたかと思うと捨て台詞を吐いて去ってくれるではないか。


 どうやらサシャとリリアナが殺気を飛ばしてくれたようである。


 二人から殺気を向けられて気絶しない所からみてもルドルフは何だかんだでそこそこの強さは持っているのだろう。


 とりあえず、これから色々と大変そうだなと思いながら休憩時間を消費するのであった。

 

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